【光る君へ】待望の皇子誕生の裏で、まるで夫婦のような紫式部(吉高由里子)と藤原道長(柄本佑)に周囲は疑念を抱くばかり…
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志賀佳織
そして第36回「待ち望まれた日」である。ついに彰子が懐妊した。興奮した道長は真っ先に嫡妻・源倫子(ともこ/黒木華)のもとへ走り、「中宮様がご懐妊あそばされた。急ぎ知らせに戻った」と息切れしながら報告する。ともにいた赤染衛門(あかぞめのえもん/凰稀かなめ)が「おめでとうございます!」と喜びをあらわにするのに対し、倫子はただただ万感迫る様子で、口も利けない。
そんな中、彰子のまひろに寄せる信頼は、ますます絶大なものになっていく。まひろを呼びつけては、「そなたらは下がれ」と他の女房たちを人払いする有り様だ。そうした状況にまひろは少し戸惑いつつも、明るくなってきた彰子の支えになろうと努める。
ある日、その彰子が「漢籍を学びたい」と言ってきた。いつぞや、まひろと白居易(はくきょい)の「新楽府(しんがふ)」について語り合っていた一条天皇のことを覚えていて、自分もわかるようになりたい、密かに学んで天皇を驚かせたいというのだ。その意欲を頼もしく思ったまひろは、真摯に向き合って指南していく。
彰子が懐妊したことで、いよいよ騒がしくなってきたのが、生まれて来る子が皇子であった場合の、次の東宮(皇太子)の座だ。折しも花山院が亡くなった。冷泉帝の第二皇子でありながら、20年以上を自分よりも年下の一条天皇の東宮として過ごしている居貞(いやさだ)親王(木村達成)は、自身の息子が東宮にならなければ冷泉帝の皇統は途絶えてしまうと危機感を覚える。一方、自らの家を再興したいと切望している藤原伊周も、彰子に皇子が生まれることによって道長の権勢が盛んになることを危惧せずにはいられない。
産み月が近くなってきた彰子は里である土御門殿に下がる。それとともに、まひろも土御門殿に入る。そこには道長の計らいで、落ち着いて物語が書けるよう局が用意されていた。案内した倫子は、まひろにあらためて感謝を述べる。「藤式部の物語の力が帝のお心を変え、中宮様を変えた。母として、私は何もしてやれなかったが、そなたが中宮様を救ってくれた。心からありがたく思っておる」。嬉しさを覚える反面、まひろの表情にはどうしても微妙な陰が出てしまう。
しかし、折々の彰子への指南は続いていく。そんな二人の様子を面白く思わない女房が赤染衛門に、道長とまひろが怪しい間柄だと吹き込む。一方、もう一人、まひろを快く思わない人物があらわれた。今は亡き皇后・定子(さだこ)に仕えた清少納言(ファーストサマーウイカ)である。定子の次女である媄子(よしこ)内親王が9歳で早世し、伯父である伊周を弔問に訪れた彼女は、一条天皇が今や『枕草子』ではなく藤式部の書く物語に夢中であること、さらに藤式部=まひろであることを知り、酷いショックを受ける。そして伊周に、その物語を読みたいと訴えるのだった。
ついに彰子が出産の日を迎える。道長は、その様子を書き留めるようにまひろに命じる。苦しむ彰子に取り付く物怪を祓う祈祷僧たちも集められるが、取り憑かれた寄坐(よりまし)の苦しみ方が酷い。なんと伊周が彰子を呪詛していたのだ。しかし彰子は無事出産する。生まれたのは皇子だった。敦成(あつひら)と名づけられた皇子は、一条天皇により親王宣旨を受けた。
敦成はすこやかに育ち、親王生後50日を祝う儀式「五十日(いか)の儀」も執り行われる。無礼講で皆が心地よく宴を楽しむ中、道長は突如、「歌を詠め」とまひろに命じる。突然のことに戸惑うまひろだったが、彰子の前でこう披露する。
「いかにいかが数へやるべき八千歳(やちとせ)のあまり久しき君が御代(みよ)をば」
すると、間髪入れず、道長も立ち上がりこう続けた。
「あしたづのよはひしあらば君が代の千歳の数も数へとりてむ」
この、道長に祝いの和歌を読むよう命じられた場面は『紫式部日記』にも記録されているが、実際はどんな雰囲気だったのか。ドラマではあうんの呼吸で即興で歌を詠み合う二人の姿に、一瞬場が凍りつく。まず最初に、倫子が顔色を変えて席を立ち、離れた場所からは赤染衛門が厳しい視線をまひろに送っていた。倫子を追う道長。そして宴の後、廊下でまひろは赤染衛門に呼び止められる。「左大臣様とあなたはどういう間柄なの?」
えっ、ここで終わり?(笑) そんなぁ。いよいよ「わが世の春」を手中にしていく道長と、それを「パートナー」として支えていくまひろ。『源氏物語』の続きも気になれば、恐ろしい表情をしていた清少納言も気になる! 佳境に入ってきた物語にますます注目だ。
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