「光る君」の子どもと孫の物語とは?『源氏物語』のあらすじをわかりやすく解説【後編】
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鷹橋 忍
NHK大河ドラマ「光る君へ」を見て『源氏物語』を読んでみたくなった方は、少なくないことでしょう。現存の『源氏物語』は54巻あります。作家 鷹橋 忍さんに、そのあらすじをわかりやすく教えてもらいましょう。前回は一部と二部についてお話ししました。今回は、第三部のあらすじです。
↓↓【前編】一部と二部はこちら『源氏物語』のあらすじをわかりやすく解説 「光る君」の恋愛遍歴と栄華、その翳りとは?
第三部は、光源氏亡き後の、彼の子孫たちの物語
第三部は、光源氏の子どもや子孫たちの物語です。
主人公は光源氏と女三宮の子(実は柏木と女三宮の子)・薫と、今上帝の第三皇子で、光源氏の孫にあたる匂宮(母は、光源氏と明石の君の娘・明石の中宮)です。
第三部は、外伝的な内容の「匂宮三帖」と呼ばれる三帖のあとに、「宇治十帖」と呼ばれる「橋姫」以降の十帖が続きます。
以下、「宇治十帖」のあらすじをご紹介します。
薫は、宇治で仏道修行に励む光源氏の異母弟・八の宮(桐壺帝の第八皇子)と親しくなり、宇治へ通うようになります。
八の宮には、長女の大君と、次女の中の君という二人の姫がおり、薫は大君に心を奪われました。
一方、匂宮は、薫から宇治の姫君の話を聞くと、姫君に興味を抱き、歌を贈るようになります。
八の宮の没後、薫は大君に想いを告げますが、受け流されてしまいます。
大君は、薫と妹・中の君との結婚を望みました。
ですが、薫は中の君が匂宮と結婚すれば、大君も振り向いてくれるのではないかと考えます。
薫の策略により、匂宮と中の君は結ばれ、結婚が成立しました。
ところが、匂宮の母の反対もあり、匂宮は宇治に通うことが難しくなります。
中の君は深く傷つき、大君にいたっては、心痛がたたって病死してしまいました。
その後、薫は大君の異母妹で、大姫によく似た浮舟と結ばれ、宇治の山荘に隠し住まわせます。
ところが、匂宮が侍女を欺いて浮舟の寝所に入り込み、強引に関係を結んでしまいます。
薫と匂宮の板挟みとなった浮舟は、苦悩の末に宇治川に身投げする決意を固め、失踪しました。
薫たちは、浮舟は亡くなったと思っていましたが、実際は比叡山の高僧・横川の僧都に助けられ、出家して、小野の山里で暮らしていました。
浮舟の生存を聞きつけた薫は、浮舟の異母弟・小君に手紙を託して、浮舟を訪ねさせます。
しかし、浮舟は涙を流しながらも、小君との面会すら拒み、手紙に返事も書きませんでした。
薫は、「誰か他の男が、浮舟を囲っているのか」などと考えたと、もとの本にはあるそうです——として、現存する『源氏物語』は、ここで幕を下ろします。
些か物足りなさを感じるラストかもしれませんが、紫式部は読者に物語の続きを委ねたのかもしれません。
▼前編 第一部、第二部はこちら▼
『源氏物語』のあらすじをわかりやすく解説 「光る君」の恋愛遍歴と栄華、その翳りとは?
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