【光る君へ】紫式部(吉高由里子)の『源氏物語』33帖が完成。新たなキャラ(伊藤健太郎)の登場で、今後の絡みにも期待大!
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志賀佳織
第38回はいきなり、ききょうの殴り込みのような訪問から始まる。『源氏物語』の感想を嫌味たっぷりに述べつつ「褒める」ききょうの発言や圧に、まひろは、礼を言いつつ少々気圧され気味だ。
思わず、その才能をもっと活かしてほしいという純粋な気持ちから、ききょうに藤壺への出仕をすすめるが、ピシャリと断られてしまう。「私は、亡き皇后・定子様のお身内をお支えするために生きております。今日は敦康親王様のご様子を伺いに参りました」。そして中宮・彰子に実の子が生まれても、まだ敦康親王を手元に置くのはなぜかと問う。
さらに、なぜ、まひろが『源氏の物語』を書いたのかと問い詰める。一条天皇の心から『枕草子』の存在を消し、定子を忘れさせるよう、左大臣に頼まれたのかと言われると、まひろは静かにこう答える。「帝の御心を捉えるような物語を書きたいとは思いました」
すると、ききょうはキッと目を吊り上げてこう言うのだった、「私は腹を立てておりますのよ、まひろ様に。『源氏の物語』を恨んでおりますの」。ききょうの屈折していくさまが何だか切ない。
藤原行成が藤壺に敦康親王を訪ね、元服の時期を道長に相談したいと伝える。しかし、彰子を慕う敦康親王は、元服したら藤壺を出て行かねばならないことを思い、元服はしたくないと言い張る。
その頃、敦成親王の寝所の縁の下から呪符(じゅふ)が見つかった。急ぎ調べさせると、円能(えんのう)という僧が関わっていることがわかり、厳しい尋問を受けた円能から呪詛(じゅそ)の首謀者は藤原伊周の叔母の高階光子(みつこ)と伊周の妻の兄・源方理(かたまさ)であり、呪詛の対象は彰子、敦成親王、道長であることが判明した。呪詛の目的は、伊周と敵対する者の排除だということもわかった。
大学寮で律令や格式を教える教官である明法(みょうぼう)博士によると、呪詛の首謀者、実行者は死罪が相当とのことだったが、道長は一条天皇に、官位剥奪が相当だと進言する。あまりに厳しい処分はかえって恨みを募らせることになる。それを恐れてのことでもあった。結果、天皇により伊周は参内停止、高階光子、源方理は官位剥奪、円能は禁獄という処分が下された。
道長は頼通に「われらがなすことは敦成様を次の東宮になし奉ること。そして一刻も早く御即位いただくことだ」と告げて、頼通を驚かせる。「家の繁栄のためではないぞ。なすべきは揺るぎなき力をもって民のためによき政を行うことだ」
3月には道長の思うとおりの人事が行われ、藤原実資(さねすけ/秋山竜次)は大納言に、藤原公任(きんとう/町田啓太)と藤原斉信(ただのぶ/金田哲)は権大納言に、藤原行成は権中納言となった。すでに権中納言であった源俊賢(としかた/本田大輔)を含め、この4人が後に言うところの「一条朝の四納言」である。また、まひろの父・為時は8年ぶりに官職を得た。
ある日、藤壺で彰子に甘える敦康親王の姿を目にした道長は、そこに危ういものを感じ、いよいよ元服を急がねばと思う。
頼通の結婚が決まり、彰子は第二子を懐妊。その頃、藤壺ではぼやがあり、敦康親王は姉の脩子内親王、ききょうとともに一時的に伊周の屋敷に移った。そこで敦康親王は、道長が自分を邪魔にしていると伊周に訴える。すると伊周の子・藤原道雅(みちまさ/福崎那由他)が吐き捨てるようにこう言うのだ。「藤壺の火事とて、誰の仕業かわかりませぬな」
後日、伊周は土御門殿に道長を訪ね、敦康親王を一条天皇から引き離さないでほしいと訴える。一条天皇に許されたにもかかわらず、なぜ参内しなかったのかと道長が尋ねると、伊周の表情が急に変わり、「お前のせいだ、何もかもお前のせいだ!」と叫びだした。何かに取り憑かれたように、呪詛の言葉を繰り返す伊周の姿に、道長は彼が正気を失っていることを知ったのだった。
「道長はいつから悪い人になるのか」と聞かれるという柄本佑さんの発言があったが、徐々に権力を手にしていく裏には、「民のための政をなさねばならぬ」という強い意思があったということが、このドラマではきめ細やかに描かれている。まさに、若き日にまひろと交わした約束に準じて生きているということなのだろう。そして、そのためにまひろの才能を借り、二人はどんどん繋がりを深くしていく。
政治家としての道長と、作家としてのまひろがそれぞれどんな道を進んでいくのか、いよいよしっかり見届けなければならない時期になってきた。二人と一緒に駆け抜けよう。
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