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【光る君へ】紫式部(吉高由里子)の『源氏物語』33帖が完成。新たなキャラ(伊藤健太郎)の登場で、今後の絡みにも期待大!

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志賀佳織

【光る君へ】紫式部(吉高由里子)の『源氏物語』33帖が完成。新たなキャラ(伊藤健太郎)の登場で、今後の絡みにも期待大!

大河ドラマ「光る君へ」第37回より ©️NHK

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2024年のNHK大河ドラマ「光る君へ」。『源氏物語』の作者・紫式部のベールに包まれた生涯を、人気脚本家・大石静がどう描くのか? ここでは、ストーリー展開が楽しみな本ドラマのレビューを隔週でお届けします。今回は、第37回「波紋」と第38回「まぶしき闇」です。

▼「光る君へ」のレビュー一覧は▼2024年NHK大河ドラマ「光る君へ」レビュー

「左大臣様とあなたはどういうお仲なの?」––––赤染衛門(あかぞめえもん/凰稀かなめ)に藤式部ことまひろ(後の紫式部/吉高由里子)が呼び止められ問い詰められたところで終わった前回。形を変えながら、ますますソウルメイトとしての絆を強くしていくまひろと藤原道長(柄本佑)を取り巻く状況は、やはりそのまま順調には運ばない。

厳しく叱責するのかと思いきや、言葉に詰まるまひろを赤染衛門は穏やかに諭す。「そういうこともわからないでもないけれども、お方様だけは傷つけないでくださいね」。以前、自身が内裏に上がった背景をまひろに語っていた赤染衛門。夫で苦労した身の彼女は、さすがに酸いも甘いもかみ分けた大人なのだろう。こんな言葉にも彼女の人生が透けて見える。それだけに、まひろはぐうの音も出ない。

土御門殿では出産を終えた藤原彰子(あきこ/見上愛)が、内裏に戻る際に一条天皇(塩野瑛久)に土産を持参したいと思いつく。まひろが書く『源氏の物語』を美しく製本して献上したいと言う彰子に、父である左大臣・道長は色とりどりの極上の紙や筆、硯(すずり)を用意する。

各巻の清書は、藤原行成(ゆきなり/渡辺大知)ら能書家に依頼し、彰子や女房たちは冊子をまとめることに励む。彼らを労いに訪れた道長と妻・源倫子(ともこ/黒木華)に、彰子は「父上、紙は藤式部に」と無邪気に頼む。「筆や硯も入り用であろう」と言う道長に、戸惑った視線を泳がせ礼を言うまひろ。倫子との間にも一瞬緊張が走るが、ここは平然と倫子も振る舞う。「帝がお喜びくださる冊子となるよう、みな頼みますよ」と微笑むのだった。

みんなの働きが実り、大層美しい『源氏の物語』33帖(じょう)が完成する。それを見届けたまひろは、「一度里に下がることをお許しいただきたくお願い申し上げます」と彰子に願い出る。最初は不安をもらす彰子だったが、「久しぶりに老いた父と娘の顔を見て参りたいと存じまして」とのまひろの言葉にこれを認め、家族への土産として絹と菓子、米をもたせる。「ただ内裏に戻るときには一緒に参れ」「そのときまでには必ず戻ります」

里に帰ったまひろに、「お前の働きのお陰で何とか家の者が食べていける。ありがたいことだ」と父・藤原為時(ためとき/岸谷五朗)は感謝する。しかし久しぶりに会う娘の賢子(かたこ/梨里花)は、母であるまひろに硬い表情で接し、よそよそしい。「気難しいところは私に似ております」とため息をつくまひろだったが、その夜の食事では、内裏での体験を酔いにまかせて、面白おかしく、時に自慢げに話して、ますます賢子の心を閉ざしてしまう。

その夜、文机に向かったまひろが紙に書く言葉は「罪」「罰」であった。賢子はそんな母の姿を遠巻きに眺める。

翌日早くも彰子から「内裏に早く戻るように」との文が届く。そしてそれを知った賢子はついに母への不満を爆発させる。「何しに帰って来られたのですか? 内裏や土御門殿での暮らしを自慢するため? 母上はここよりあちらにおられるほうが楽しいのでしょう。母上なんか大嫌い!」

大河ドラマ「光る君へ」第37回より ©️NHK

一度できてしまった溝は、今やそう簡単には埋まらないまでに深くなっていた。「お前がいない間、あの子の友は書物であった。お前によく似ておる」と父・為時は傷心の娘を慰める。内裏では道長が赤染衛門に「藤式部の姿が見えぬがいかがした」などと、これまた無邪気に尋ねる。赤染衛門の中には、二人の結びつきに確信ができたことだろう。いつまで経っても、二人を取り巻く環境は厳しい。

敦成(あつひら)親王を連れて内裏に戻った彰子のもとへ、一条天皇の渡りがある。彰子は天皇に美しく装丁した『源氏の物語』33帖を献上する。その美しさに天皇は感嘆し、礼を述べるが、まひろからまだ続きがあると聞かされて、彰子とともに驚く。

「これで終わりではないの?」と彰子。「光る君の一生はまだ終わってはおりませぬ」。「それは楽しみである。大いに励め」と激励した一条天皇は、藤壺でこの物語を朗読する会を開いてはどうかと提案する。後日、会は開かれ、天皇、彰子のほか、道長の息子の藤原頼通(よりみち/渡邊圭祐)、その異母弟である藤原頼宗(よりむね/上村海成)ら若い公卿(くぎょう)や女房たちも参加する華やかな会となった。

「女ならではのものの見方に、漢籍の素養も加わっているうえか、これまでにない物語となっている」と、一条天皇のまひろへの評価も上々に。これを機に『源氏の物語』はますます広く貴族の中に知れ渡り、作者である藤式部の評判は一躍し、かつてはひっそりしていた彰子の藤壺も華やかなサロンに変わっていった。

一方、ききょう(清少納言/ファーストサマーウイカ)は、まひろの書いた物語を読みながら、亡き皇后・定子(さだこ/高畑充希)の遺児である脩子(ながこ)内親王(井上明香里)に今も仕える毎日だ。その厳しい眼差しには、不穏な陰が見え隠れする。

そして、もう一人の危険人物、藤原伊周(これちか/三浦翔平)である。彼のもとには親類が訪れ、敦成親王が誕生したことにより、敦康(あつやす)親王(渡邉櫂)の立場がどうなるのかと詰め寄っていた。「光が強ければ強いほど、陰もまた濃くなる」と最後に告げた安倍晴明(はるあきら/ユースケ・サンタマリア)の言葉が改めて思い起こされる場面だ。

戦乱のシーンがないとか、政が描かれないとか、この作品に関する批判、不満も聞かれるが、よく見たまえと言いたくなる。この世でいちばん興味深く、また一つ転んだら恐ろしくもなるものが「人の心」である。刀で切りつけたり、鉄砲で撃ったりなどの行為より、よほど人の運命を翻弄する道具にもなる。こうした「嫉妬」や「怒り」や「焦り」が、政争ともなり、抗いがたい苦しみにもなっていく様子が、まひろの書く『源氏の物語』と二重写しになって見えてくるところに、このドラマの面白さがあるのだ。

穏やかな日々が続いた内裏だったが、その年の大晦日に藤壺に盗人が入る。夜、執筆をしているまひろに、どこからか悲鳴が聞こえてきた。慌てて駆けつけたところ、女房2人が衣をはぎ取られて恐怖に震えていた。寝所より出てきた彰子は、すぐに取って返し、彼女たちに自らの衣を与えるのだった。盗人が逃げた後、どこからか現れた人物が覆面をチラリと上げると、あれれ、美青年じゃない(笑)。またしても注目すべき人物登場。これからどう絡んでくるのか楽しみだ。

知らせを受けた道長は、まひろが真っ先にその場に駆けつけたことに礼を述べる。まひろは彰子の行動の立派さを報告すると、「お前もよくやってくれた。これからも中宮様と敦成親王様を宜しく頼む」と道長。そして「敦成親王様は次の東宮となられるお方ゆえ」。「えっ? 次の?」とまひろ。大変なことを聞いてしまった。では定子の遺した一条天皇の長男・敦康親王はどうなるのか。まひろは驚きと戸惑いを隠せない。

年が明けると、あろうことか一条天皇は藤原伊周に、道長と同じ正二位(しょうにい)の位を授ける。その真意を測りかねる公卿たち。そして、まひろの父・藤原為時にも、正五位下(しょうごいのげ)が授けられた。そんなある日、まひろのもとをききょうが訪ねてくる。「お久しゅうございます。まひろ様、光る君の物語、読みました」

また、ここで終わるのである。ここ数回このパターンが多いなぁ、気を持たせるなぁと思いつつ1週間楽しみに待って、いよいよ第38回「まぶしき闇」である。

▼前回のレビューはこちら▼
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