舞踊歴73年の奇跡のバレリーナ【森下洋子さん】に聞いた「いちばん美しいと思うもの」とは?
バレエに出合えたことが人生でいちばんの幸せ
やさしく力強い、森下さんからのメッセージ。そこにはこんな思いも込められている。
「私は広島出身。祖母は被爆者でしたが、すごく明るかったんです。『あんなに大変な目に遭ったのに、私はこうして生きていられる』と、孫の私たちによく話していました。『だから、すごく幸せ』って。私は子どもの頃からそんな祖母の姿を見ていましたから、生きていることへの感謝や喜びが常にあります。同じ一つの物事でも、マイナスにとるかプラスにとるかで人生はずいぶん変わるはず。私の祖母のようになるべくプラスに考えて、明るく強い心をもっていただきたいなと思います」
そしてこう繰り返した。「私は3歳で出合ったバレエをずっと続けていられるのが本当に幸せ」。だから、これから先の人生もバレエとともに。それが森下さんの願いだ。
「これからも、ひたすらバレエを続けていきたいと思っています。どこまで続けられるかはわかりませんけれど、自分では『あと何年くらい』などと考えたことはありません。今日が終わったら、まず明日。明日もレッスンとリハーサルができる体にしておきたい、それだけです」
12月には松山バレエ団のクリスマス公演『くるみ割り人形』が幕を開ける。温かな愛に満ちた物語を繊細に演じる森下さんの姿、ぜひ目に焼きつけてほしい。
『くるみ割り人形』を上演
森下洋子さんの【健やかな年齢の重ね方のヒント】
①稽古は今も毎日。日々の積み重ねが何よりも大切
②年齢を意識しないからこそ変わらずにいられる
50代、60代、70代と年齢を重ねてきましたが、自分では意識したことがないので変わったことは何もありません。大好きなバレエを続けられて、幸せな人生だと思っています。
③生きていることへの感謝、喜びを常に忘れない
周囲に支えられて、バレリーナ人生を歩んでこられました。自分に対しても「幸せに満ちあふれている」という喜びを常にもって、感謝しながら生きていきたいと思います。
撮影/小川知子、宮崎貢司 取材・文/本木頼子
※この記事は「ゆうゆう」2024年12月号(主婦の友社)の記事を、WEB掲載のために再編集したものです。
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