永吉(松平健)が神戸行きを激怒する理由にちょっとかわいさを感じた【おむすび】
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田幸和歌子
一気に舞台はスキップ。まさに「展開早っ!」ではあるが、いろいろなことすっ飛ばしてしまった感はいなめない気がする。早くメインテーマである「栄養士への道」に入りたいという部分もあるのかもしれないが、濃密でスピード感があり、視聴者もついていくのが大変な感覚の展開の速さというよりは、細かなところを投げっぱなしにしてしまったような感覚のほうが強い。
そのために、せっかくの阪神淡路大震災や、平成文化を表すギャル文化も、こなしておくべきチェックポイントのような扱いのような軽さをどこかに感じてしまった。
お約束展開がかえって安心感を与えてくれる
さて2年後の舞台。翔也にとって、最後の夏である。久しぶりに翔也は結を呼び出し、決勝戦を見に来てほしいと願う。
「絶対に勝って、お前を甲子園に連れていく!」
鉄板というか、平成飛び越して昭和のラブコメのようなお約束のセリフではある。朝ドラというものは、お約束を詰め込んだものであってもいいとは思う。決勝戦当日、結たちとOG含む「ハギャレン」メンバーたちも球場に集結、ギャル姿でパラパラ風の応援をするなど華やかなシーンも盛り込みつつ「青春ドラマ」的な空気のなか試合が進む。しかし、最後の最後に翔也がサヨナラホームランを撃たれ、夢は散ってしまう。これもまた、青春ドラマとしてお約束展開だが、それがかえって安心感を与えてくれる。
翔也に呼び出され、さぞ落ち込んでいるだろうと心配する結だが、重要アイテムだった「夢ノート」すら、「んなもん書き換えればいいべ」と、あっけらかんとした様子に拍子抜けする結。そしてふたりはようやくお互いの気持ちを確認することになる。こういった等身大のラブコメ的展開は、とてもナチュラルで、翔也の芯の強さを持つ陽性のキャラクターも相まって、好感のもてる展開だ。
そして、結の気持ちが固まる。
「栄養士になりたい」
両親の前でこう宣言する。困った人がいれば放っておくことができないという「米田家の呪い」と思う結の気持ちが回想シーンとともに描かれる。栄養を学び、料理を届けること、そこに「呪い」は帰結したようである。
その思いに感応するように、聖人の決意も固まる。愛子(麻生久美子)に促され、もう一度神戸に戻り理髪店をやりたいという本音を告白する。これを知った祖父の永吉(松平健)は一旦は激怒するが、その理由が「つまらなくなるから」というのは、長年の確執も乗り切ったあとだけに、ちょっとかわいさを感じた。
そんなわけで、次週から「神戸編」に突入、いよいよ栄養士への道を歩き始める結だが、ドラマはまだ3分の1もきていない段階だ。栄養士への道のりの展開も、もしかしたらものすごい展開の速さがあるかもしれない。そのとき、どんな光景が我々視聴者の前に広がるのか。そういう楽しみも生まれてきたような気もしている。
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