【おむすび】今週が第1週でもいいのではという意見も。「平凡さ」を描く面白さがようやく浮かび上がってきた
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田幸和歌子
朝ドラ的な空気が感じられる気がする
さて、席順などから同じ班になったのが、登場時から結の何も考えていなさにずっと呆れた様子で、職業意識の高い沙智(山本舞香)と、医者家系の娘だというお嬢様、佳純(平祐奈)、そして社会人経験を経て栄養士を目指す中年男性の森川(小手伸也)。
バラバラの面々がひとつの目標に向かって時にぶつかったり、力を合わせて課題に取り組んだりするところ、そして時に厳しく、しかしそこには生徒たちの未来に期待する講師陣といったあたりは、『舞いあがれ!』の航空学校編など、商店街の和気あいあいと同じく朝ドラ的な空気が感じられる気がする。
こういった朝ドラという作品群の中では何度も描かれた要素は、それこそある意味「平凡」なのかもしれない。しかし一方で「見やすくなった」といった意見も見られるようになっていることも確かだ。「献立やレシピを通して、人知れず人々の健康と幸せを願う”縁の下の力持ち”」と、制作発表時に制作統括担当がヒロイン像について語っていた。当初から目指した「平凡さ」を描く面白さ、平凡であることで生まれる面白さがようやく浮かび上がってきたのではないだろうか。
極端ではあるが、この「見やすさ」ゆえ、今週が第1週でもいいのではという意見もあるかもしれない。実際、ここまでの放送で残念ながら冷めた感情をドラマに抱いた視聴者も少なくない実感はある。とはいえ、ハギャレンメンバーが電話の会話を通して登場するとちょっとホッとするし、勘違いで激怒したりするなど時々ウザい部分もありながらも基本的には陽キャラの祖父・永吉(松平健)の不在も少し寂しく感じたりもする。ここまで見てきた人なりの「糸島ロス」は、きっとそれぞれあるのではないだろうか。
今週ラスト、派手目ファッションで商店街の前に立ち、「帰ってきたよ——」と高らかに声をあげる歩の姿が描かれるカットで締めくくられた。
次週は歩と、震災で命を失った歩の親友の父で、今も米田家との溝深い靴職人の孝雄(緒方直人)の衝突が、予告によると大きな山場となるようである。学校や商店街などのシチュエーションが「平凡」であるほどそこに落とされる石による波紋は大きなものとなるだろう。その効果が見応えある展開になることを期待しつつ第9週の放送を待ちたい。
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