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「養老孟司先生、がんになる」初めて自らのがんを明かした心境は—虫法要でのあいさつ全文を紹介

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ゆうゆうtime編集部

心筋梗塞の奇跡的回復から4年。養老孟司先生が、がんになりました。2024年5月16日に「小細胞肺がん」と診断されてから、抗がん剤治療の途中までの約3カ月に密着した新刊『養老先生、がんになる』(養老孟司・中川恵一著)より、一部を抜粋してお届けします。2024年6月4日(虫の日)の虫法要に出席した養老先生は、ご自身のがんを初めて明かしました。そのあいさつ全文をご紹介します。

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『養老先生、がんになる』養老孟司・中川恵一著(エクスナレッジ刊)2024年5月から始まった抗がん剤治療、6月の建長寺虫供養、7月〜8月の虫展開催に向けての準備をしながらの再度の入院、そして放射線治療を受けた3カ月に密着した闘病記です。

何かで死ななきゃならないんですけど、わかっているほうがまだいいかなと

虫法要での養老先生のあいさつ全文
——2024年6月4日 鎌倉・建長寺

私は昨日午前中、東大病院で血液検査を受けまして、担当の医者から病院を出てよろしいと言われ、出てまいりました。

実は今回の法要を仕切ってくれました、新潮社の足立真穂さんからは、リモートでの出席でもよいと言われていました。

それを聞いたときに、「リモートは絶対に嫌だ」と思ったので、どうしても法要に出たいという話をドクターたちに申し上げたところ、何とか出してくれましてね。

ちょっと自分の病気の話をしたいと思います。年寄りは病気の話をしたがるもので、それはよくないとは思うんですけど、ある程度正確なことをお伝えしておこうと思って話すことにします。

実は4月のはじめ頃から、肩がこるようになりました。もともと虫の標本をつくったりするので、じっとしている時間が長く、肩がこるんですね。そのときは右肩がかなりこって、娘にもんでもらったりしていたんですが、4月末が近づく頃になってもよくなりません。

学生の頃に習ったのが、何か軽い症状が続いている場合、1週間たって悪くなっているときは、病院に行ったほうがよろしい。何でもないものだと、1週間たてばだいたい症状が消えてしまうか、よい方向に変化するものだと。

今回は1週間たっても、肩こりがひどくなる一方なので、4月30日に、東大病院の検診に行くことになりました。

虫法要の場で、養老先生が自らのがんを初めて明かした瞬間

まず放射線科の中川さんのところに行きました。娘があらかじめ中川先生に連絡してくれて、「ちゃんと診てください」と言ったらしいんです。中川さんは、困っ たような顔をして、「ちゃんと診ているんですけどね」と(笑)。

肺のCTを撮ってもらったら、肺がんが見つかりまして。大きさは3cmちょっと超えるぐらい、ステージIIのBといわれました。

一番の問題は、とくに肺がんというのは脳に転移することが多いというのです。転移があると大変なんですよ。私の場合は、そういうものが一切なく、リンパ腺の転移もないということでした。

とりあえず、入院して検査をしました。細胞も取って。いわゆる生検というやつですね。それで正体を確かめたところ、小細胞性の肺がんということがわかりました。これは現在では治療法がかなりはっきりできているので、抗がん剤の点滴を5月16日から3日間やりました。

抗がん剤は相当な副作用があるというので、その後の経過を昨日まで診ていました。昨日の血液検査の結果が悪いと、外に出られなかったんですけど、その結果が大変よいということで、やっと釈放してもらいました。

まだ治療は終わりではないので、また6月10日に病院に戻って、もう1度抗がん剤をやることになっています。

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