2つの震災を「結ぶ」形になった【おむすび】 残念でたまらないと感じた描写と期待したいこと
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田幸和歌子
「米田家の呪い」は発動されなかったか
ヒロインの周辺事情としては、あっという間に翔也(佐野勇斗)との新婚生活がスタートし、あっという間に妊娠・出産。妊娠期間に重症妊娠悪阻となり、そこで管理栄養士の西条(藤原紀香)と出会い大きな影響を受けるという流れ。患者ひとりひとりに過剰なほどに親身に対応する医師でなく管理栄養士という新鮮なキャラクターは、ヒロインが管理栄養士への道を選択するためのご都合的な配置にしか見えない。
そして、東日本大震災という大災害に際して、「困った人がいたら放っておけない」という「米田家の呪い」が発動されたような形跡が見られなかったことも不思議なことだった。阪神・淡路大震災のときに糸島から神戸まで駆けつけ食料などの調達に奔走した祖父・永吉(松平健)はどうだったのか。父・聖人は被災地に理容用のハサミを詰めて送ったぐらい。歩はトラウマ発動で悲しみに沈み、親友の墓参りをする。そして育休中の結は、家で子育てと休養をしつつ、友人・カスミン(平祐奈)の栄養士としての被災地ボランティアの苦労話を聞いて「そっか」と返すだけ。
しかし、「西条さんみたいな管理栄養士になりたい」と新たな決意を翔也に告げる際に結はこう言った。
「呪いやない。これが、うちのやりたいこと。うちの生きる道」
サブタイトル回収である。しかし、生きる道であっても困っている人を助けたいという思いがあるのであれば、東日本大震災の時にも「うちにできることは」と考える前に動いていそうな気もするがどうなのだろうか。
2つの震災を「結んだ」このドラマ、少しだけ気になることは、また「そして時は流れ」と終盤に令和に時代が飛び、この先訪れる3.11に合わせ、昨年発生した能登半島地震が盛り込まれはしないかということだ。平成から令和へ、3つの大震災を通して人と人の心を「むすんだ」作品となりましたという、ストーリーや人間関係よりもコンセプト重視なことが透けて見えないような内容を期待したいところだ。
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