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「レディース」と「スケバン」の対立構造って何なん?【おむすび】結(橋本環奈)と翔也(佐野勇斗)の結婚で後半戦スタート

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田幸和歌子

「レディース」と「スケバン」の対立構造って何なん?【おむすび】結(橋本環奈)と翔也(佐野勇斗)の結婚で後半戦スタート

「おむすび」第70回より(C)NHK

1日の楽しみは、朝ドラから! 数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。平成青春グラフィティ「おむすび」で、より深く、朝ドラの世界へ!
※ネタバレにご注意ください

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両家の両親が揃い踏みするが……

さて、後半戦スタートである。

橋本環奈主演のNHK連続テレビ小説『おむすび』が、第14週「結婚って何なん?」が放送された。橋本演じるヒロイン・結が、相手役の翔也(佐野勇斗)にプロポーズ返しをし、二人は晴れて結婚に向けての道を歩み出すという、大きな節目といえば節目というような場面で2025年に突入したこの作品。

しかし、これまでに描かれてきたギャルサー、栄養士に向けての進学、翔也の野球、就職などといったさまざまな要素がなんとなく「さらっと」通過していったような描写の積み重ねであるからか、大事なプロポーズもやはり「さらっと」感だったような印象を受ける。

今週のサブタイトルもそうだが、「ギャルって何なん?」「就職って何なん?」「働くって何なん?」と、そのターンでおそらく結が直面し悩んだ(はずの)テーマが疑問系で投げかけられている。本来、疑問に直面したあと、解決、成長していくはずだろう内容が、結局深く掘り下げられず「さらっと」、そして多くは周りの人の助けによってなんとなく、それでいてなぜか「結ちゃんのおかげやな」と、結のお手柄のように解決していく。

朝ドラのダメなヒロインのお手本の連続のようで、ヒロインの成長に共感することがなんともしづらい。「ギャルになりたい」という謎の野球生活挫折からの翔也の飛躍思考に結は「ギャルなめんな!」とキレたが、結に限らず「なめんな」と言いたくなる登場人物が多く、「何なん?」と言いたくなるのは視聴者のほうだというのはなんとも皮肉な話である。

さてそんな結と翔也が今週直面したのはサブタイトル通り「結婚」である。結婚に向けていろいろな準備をしていくわけだが、まずは挨拶と報告。それを切り出そうとする翔也に「言わせない」ようにプロレスまがいのドタバタを翔也と繰り広げる父・聖人(北村有起哉)とか、おそらくコメディ仕立てで見せたいのだとは思うが、軽妙なBGMなども「ここ笑うところですよ」感のほうを強く感じてしまう。

翔也も大事な自分の親への結婚報告を、短いメールで、しかも婿に入るという大事なことを告げるのはどうなのか。案の定、キレた翔也の母・幸子(酒井若菜)が栃木から乗り込んでくる。幸子は元レディースという設定、名古屋の元スケバンだという結の母・愛子(麻生久美子)とのメンチ切り合戦が繰り広げられるのも、笑うところなんだろうとは思う。余談ではあるが、そもそも「レディース」と「スケバン」というのは対立構造として並び立つ属性なのだろうか。

「おむすび」第67回より(C)NHK

結局、両家の両親が揃い踏みをして張り詰めた空気による挨拶(話し合い?)の場が設けられたが、フリだけ大変そうにしたものの、やはりここも「さらっと」認められて終わってしまった。

愛子と幸子のバチバチした空気も、愛子が翔也の実家の家業であるイチゴの収穫を手伝ったりしたことですっかり打ち解けたことになっていて、「いつのまに!?」「お正月で見るの忘れてた!?」となりそうな後日談が飛び出し仰天した。そもそも愛子が「家出」したときに理容店の営業がままならず大変なことになっていた気がするが、定休日を利用したのだろうか。せめて「そういえばいなかった!」のセリフ一言挟んでくれるだけでも助かるのだが、それは難しいのだろうか。

結の専門学校での「同級生」モリモリこと森川を演じた小手伸也さんがときどきX上で、本来はこういう場面とセリフがあったけれど放送ではカットされました、この場面の演技や動きは脚本には書かれていなかったけれどアドリブですみたいな裏話を投稿してくれることがあり、それを見て納得することもある。しかし、それで補完しなければならないのは、編集上のジャッジが視聴者とずれているからかもしれない(その編集ジャッジの不思議さは、土曜放送のダイジェスト版にも強く感じることがあるのだが)。

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