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今年75歳・姜尚中さんに聞く「人生後半戦、もう私は一人になりたいわ」そんな思惑の先にある落とし穴

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ゆうゆうtime編集部

今年8月で75歳になるという、政治学者 姜尚中さん。数々のベストセラー本を持ち、論客としても知られる姜さんは、今この時代を「乱気流に入っている」といいます。話題の新刊『最後の講義 完全版 政治学者 姜尚中』(主婦の友社)では、世界の中で、私たちがこれからをどう生きるのかという指針を示しています。ここでは、ゆうゆうtimeの読者目線で身近な疑問に答えていただいたインタビューをお届けします。

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自己肯定感が低いという中高年におすすめしたいこととは?

——朝鮮戦争開戦の年に、在日二世として熊本に生まれた姜尚中さん。書籍の第1章では「肯定的なアイデンティティが持てなかった」という若き日々について語っています。
次元が異なりますが、自己肯定感が低い50代60代の女性も少なくありません。「経済的に夫に依存してきた」「社会に貢献できていない」「子育てが終わって虚脱感におそわれた」などという悩みをもつ読者に、どうしたらアイデンティティを形成できるのか、アドバイスをいただけますか。

姜尚中さん(以下、姜尚中) そもそもなぜアイデンティティにこだわるかというと、“自由度が高くなったから”だと思います。自由度が高くない時代であれば、自分は今まで何をやってきたんだろうか?とか、果たして本当に必要な人間なんだろうか?とか、こういうことは悩まなくて済むわけです。

私たちが悩むのは、やっぱり自由度が高いから。ある一定の年齢に達して、まあまあの資産があれば、それまでよりは自由度が高くなる。社会的な拘束がなくなってきますね。そうなればなるほど、実はいろんな問題について悩んだり考えたりすることが多くなるんです。だから、ゆうゆう世代のある年齢に達して、自由度が高くなっているからこそ、悩みが出てくる。

これを難しい言葉で言うと「無聊(ぶりょう)」というわけです。「無聊を慰める」という言い方がありますね。我々は朝起きて労働をしに会社に行ったり、どこかに行く——それがもしね、どこも行かない、家の中にいるとしたら、ものすごく苦しくなると思う。壁のない牢獄にいるようなものなんですよ。

でも結局、自分のアイデンティティは何かと悩んだって答えは出ないんです。アイデンティティに悩むと、思弁的で哲学的なテーマになって、多分袋小路に入る。

だから一番必要なことは、具体的な作業をやること。規則正しく動くことでもいいし、ある程度拘束されるようなことでもいい。具体的な作業をしましょう。
たとえばガーデニングをやってみるとか、あるいはペットを飼う。そうすると、自分の思いどうりにならないわけですね。子犬であれば朝早く起きるからその糞尿の世話をしなきゃいけない。ある種何かをやり遂げたり、何かが終わると、じゃあ次はこうしようというのが見えてきますよ。

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