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朝ドラ【あんぱん】「生きて帰れたら、もう誰にも遠慮せん!」のぶ(今田美桜)への秘めた思いをぶつけた千尋(中沢元紀)の運命は!?

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田幸和歌子

朝ドラ【あんぱん】「生きて帰れたら、もう誰にも遠慮せん!」のぶ(今田美桜)への秘めた思いをぶつけた千尋(中沢元紀)の運命は!?

「あんぱん」第54回より(C)NHK

1日の楽しみは、朝ドラから! 数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。漫画家のやなせたかしさんと妻の小松暢さんをモデルに、激動の時代を生き抜く夫婦の姿を描く物語「あんぱん」で、より深く、朝ドラの世界へ!
※ネタバレにご注意ください

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【あんぱん】登美子(松嶋菜々子)の渾身の叫び「…生きて帰ってきなさい!」に心ふるえる。戦後80年という節目の年にふさわしい朝ドラ

嵩なりのがんばりが強く伝わってくる

戦局はじわじわと厳しさを深めていく。

今田美桜がヒロイン・のぶを演じるNHK連続テレビ小説『あんぱん』の第11週「軍隊は大きらい、だけど」は、嵩(北村匠海)の連隊での描写が全面に押し出される構成となった。高知から小倉連隊に転属され、起床ラッパに叩き起こされ、厳しい規律のもと「指導」を受ける日々が続く。

嵩は兵隊としての「心得」を古兵たちからときに恫喝され、ときには強くビンタされ、夕食のカレーライスの具の数まで厳しく管理されるといったいささか理不尽なことも、すべて「体で」叩き込まれていく。これらは嵩のモデルである『アンパンマン』の原作者・やなせたかしの実体験に基づくものではあるが、沈鬱な空気が全編に漂う。

北村匠海演じる嵩は、高知に移り住んでもずっと標準語を話し続け、絵を描くことが大好きで気弱でナイーブ、争いごとを好まない青年へと成長していった。その性質を北村が見事に演じ視聴者に届けたことで、戦争そのものに馴染めないさまはとてもよく伝わってくる。「ぼくここでやっていけるかな」と思わず口にしてしまうのにも、大きくうなづける。それでも姿勢も口調もそんなこれまでの繊細な嵩とは違うビシッとした雰囲気からは、嵩なりのがんばりが強く伝わってくる。

こうした環境を描く作品では、味方となる存在がいてくれることで少し気持ちが救われることが多い。そのひとりが藝術学校の同級生である親友・健太郎(高橋文哉)だ。出生前に、玉ねぎが目にしみるからと涙ながらに〝最後の晩餐〟となるカレーライスを作り、嵩と一緒に食べた場面が印象に残る。

健太郎は調理番として転属されたことでまさかの再会をとげ、厳しい生活の中での健太郎の以前と変わらぬ明るい福岡ことばと笑顔は、嵩ばかりでなく辛い場面を見続けてきたわれわれ視聴者にとって癒しのヒーローのような存在に感じられた。

朝ドラ【あんぱん】「生きて帰れたら、もう誰にも遠慮せん!」のぶ(今田美桜)への秘めた思いをぶつけた千尋(中沢元紀)の運命は!?(画像2)

「あんぱん」第52回より(C)NHK

そして現時点ではまだ謎めいた存在ではあるが、妻夫木聡が演じる八木上等兵もまた、嵩の理解者のような存在として描かれている。理解ある上司や先輩は、厳しい生活を描く作品では重要な存在だ。しかし、八木が嵩をかばってくれたことが先輩兵の反感を買い、「いじめ」そして暴力はさらにエスカレートしてしまう。

そんななか、八木の提案で嵩は幹部候補生試験の受験をすすめられ、試験勉強に時間をあてることを認められる。これによって暴力はいったん収まる。前述通り争いを好まないやさしい嵩をよく理解してくれているような「やさしい先輩」といった存在は、辛い描写の続く中でほっとする。

しかし、そんな試験勉強のなか徹夜で勉強しようと馬の不寝番を引き受けたものの、うっかり居眠りしてしまい受験資格を剥奪されてしまう。これもまた八木のはからいにより特例を認めてもらい、嵩は無事合格する。ただし本来の目標であった「甲幹」でなく「乙幹」での合格となってしまうが。

朝ドラ【あんぱん】「生きて帰れたら、もう誰にも遠慮せん!」のぶ(今田美桜)への秘めた思いをぶつけた千尋(中沢元紀)の運命は!?(画像3)

「あんぱん」第52回より(C)NHK

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