朝ドラ【あんぱん】「生きて帰れたら、もう誰にも遠慮せん!」のぶ(今田美桜)への秘めた思いをぶつけた千尋(中沢元紀)の運命は!?
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田幸和歌子
ともかくも嵩の合格を祝おうと、これまで嵩にビンタするなどしてきた神野(奥野瑛太)や馬場(板橋駿谷)が酒を持って厩舎に現れる。非礼を詫び、杯を酌み交わし笑顔で歌うなど和解となった雰囲気には少しほっとするが、これもまた嵩が中国への上陸を控える中で幹部候補生となったことでの手のひら返しかと思うと、人間の弱さ、狭小さが垣間見えるようで複雑な気持ちにもなってしまう。
誰もが命令ひとつで明日自分の命がどうなるかわからない。先輩たちもそんな不安を抱えながら生に向き合っている。そんなところからも戦争の理不尽さが伝わってくる。
「生きて帰れたら、もう誰にも遠慮せん!」
2年がたち、嵩は伍長へ昇進していた。注意した新兵が殴られないかと緊張するなか、
「俺は殴るのは苦手だ。こっちの手が痛いからな」
こう嵩は言う。兵隊としての経験を重ねても、やはり嵩は嵩のままだった。なんともほっとする場面であった。
そんな嵩は、海軍少尉となった弟の千尋(中沢元紀)と久しぶりに再会する。てっきり京都帝大で法律を学んでいるものと思っていた嵩が真意を問うと、卒業が繰り上げになり、海軍入りを志願した。一人だけ残るわけにはいかなかったという。
「世界でたった一人の弟」を責める嵩だが、千尋は5日後に佐世保から駆逐艦に乗船することを告げに来たのだった。
その強い決意に返す言葉を失う嵩に、千尋は伯父・寛(竹野内豊)の机の引き出しから出てきたという、父・清(二宮和也)の手帳を「兄貴が持っちょったほうがいいき」と手渡す。自分は、実は子供のころからずっと持っていたという父の写真を持っていくと告げた。
旅立つ前に、何か馬鹿みたいなことしようという嵩の提案を受け、千尋はこう言う。
「もう一度シーソーに乗りたい。もういっぺんのぶさんに会いたいにゃあ」
これまでも何度となく大事な場面で登場したシーソーだが、今度は千尋がずっと秘めていたのぶへの思いを昇華させるかのような登場の仕方をした。
「生きて帰れたら、もう誰にも遠慮せん!」
「愛する国のために死ぬより、わしは愛する人のために生きたい!」
叫ぶ千尋。何のために生きるがか。千尋がたどり着いたのは、すでに結婚してしまった愛する人のためだった。生きる目的を宣言した千尋に待ち受ける運命はどういうものなのか。
ますます厳しくなる戦況の中、それぞれの登場人物たちの行方を見守りたい。
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