歌手・ZEROさんが語る、認知症を公表した【橋幸夫さん】との支え合い、特別な「絆」とは?
独特な通販CMでおなじみの「夢グループ」に所属する韓国出身の歌手・ZERO(ゼロ)さん。ZEROさんは今年4月、橋幸夫さんとともに「韓日友好音楽“絆”大使」に就任しました。そんなZEROさんに、夢グループ・石田重廣(しげひろ)社長との出会いや橋さんへの思いなどを伺いました。
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PROFILE
ZEROさん 歌手
ぜろ●1972年、韓国生まれ。
1998年、CGキャラクター“サイバー歌手アダム”の声を担当したことで大きな話題となる。
2001年、韓国で放送されたドラマ「美しき日々」で、劇中に登場する覆面歌手“ZERO”として主題歌「約束」を担当し、大きな注目を集める。
2004年に同ドラマがNHKで放送されると、その歌声が反響を呼び、問い合わせが殺到。正式に日本デビューを果たす。
以降、心に響く歌声で、日本を拠点にライブ活動を続けている。
日韓国交正常化60周年の今年、橋幸夫さんとともに「韓日友好音楽“絆”大使」に就任した。
知らぬは本人ばかり⁉ テストから始まった大先輩たちとの日々
2004年に日本で放映された韓国ドラマ「美しき日々」。イ・ビョンホンとチェ・ジウが織りなす、あの切なくも美しい物語に心を揺さぶられた人は多いのではないだろうか。そのドラマの主題歌「約束」を歌い、物語の中で“覆面歌手”として登場した声の主––––韓国出身の歌手、ZEROさんは、縁あって「夢グループ」と出会い、「夢コンサート」に出演。今ではそのステージに欠かせない存在となっている。
ZEROさんが「夢グループ」に所属したのは2017年。その出会いはさらに数年前にさかのぼる。
「ある芸能関係の方から『夢グループ』の石田重廣(しげひろ)社長を紹介していただき、『夢コンサート』に出演することになったんです。当時のメンバーは、橋幸夫さん、森昌子さん、水前寺清子さんなど大先輩ばかり。楽屋に入っても、どこに座ればいいのか、どうご挨拶すればいいのか、わからないことだらけで、緊張の連続でした」
日本の歌謡界を牽引してきた錚々たる顔ぶれの中、まさに大先輩に囲まれての船出だった。
「緊張の中、2曲歌わせていただいたんですが、ありがたいことにお客さまの反応がよくて。そこから、『夢コンサート』に出演させていただくようになりました。今になって思えば、どうやら最初の出演は、僕がコンサートのメンバーとしてふさわしいかどうかの『テスト』だったみたい(笑)。コンサートに出演するようになってから数年後、『夢グループ』に所属することになったときは、本当に『テストに合格した!』という気持ちでしたね(笑)」
栄養ドリンク片手に楽屋訪問。気遣いの積み重ねが信頼に
当初は緊張でガチガチだったというZEROさんだが、では現在は……?
「今ですか? もう笑いばかりですよ(笑)。最初は話しかけるのも難しかったんですが、お話してみたら、先輩方はみなさん本当にやさしい方ばかり。今では僕が冗談を言って笑わせるような、本当に友達のような関係になりました。社長からも、『ZEROはみんなから愛されてすごいね。大先輩たちに、そこまで自然になじめるのは大したものだよ』とほめていただいたんですよ」
大先輩たちの懐に、ZEROさんはごく自然に飛び込んでいるように見える。しかしその陰には、彼ならではの細やかな気配りがあった。
「やっぱり、なじむための努力はしましたね。自分の何げない行動が、先輩方から見て『ちょっと違うな』と思われないように、一つひとつに気を遣いながら行動していました。たとえば楽屋に入るときも、自分が早く着いたからといって好きな席に座るんじゃなくて、先輩方が全員座られたのを確認してから空いている席に座るようにしたり、お弁当を食べるときにはお茶やお水を用意したり。そういったことを自分なりにしていたら、いつの間にかかわいがっていただけるようになっていました」
そんなZEROさんだが、大先輩である橋幸夫さんとのコミュニケーションは、特に緊張したという。
「初めて橋さんと一緒に全国ツアーを回ったとき、大スターすぎてどうしても声がかけられなくて。それで橋さんの奥さまに相談したんです。『どうしたら橋さんとうまくコミュニケーションがとれるようになりますか?』って。そうしたら、『ZEROは気にしなくていいのよ。いつでもどんどん話しかけてあげて』と言ってくださったんです。でも、ただ話しかけるのは恥ずかしいから、毎朝栄養ドリンクを手に橋さんの楽屋を訪ねたんです。ドアをトントンと叩いて、『橋さん、今日もよろしくお願いします。これ、よかったら飲んでください』って」
最初は話すきっかけをつくることから始めた2人の関係。ZEROさんの心遣いが実を結び、今では橋さんの楽屋で一緒に過ごすことが当たり前のようになっているのだそう。
「楽屋では、橋さん、石田社長、『夢グループ』の先輩である歌手の保科有里(ほしなゆり)さんと僕の4人でいることが多いですね。僕が橋さんの体をマッサージすることもあれば、保科さんと橋さんが一緒に絵を描くこともあって。本当に家族のような、アットホームな雰囲気で毎日を過ごしています。橋さんは、僕たちがいないと『どこにいるの?』って寂しがってくださるんですよ」
橋さんをはじめ、年齢を重ねてもなお、現役として輝き続ける先輩たちの姿は、ZEROさん自身の歌手人生にも大きな影響を与えたという。
「コンサートには80歳を超えた先輩も出演していらっしゃるのですが、その方たちが全国をめぐり、素晴らしい歌声を響かせている。そういった姿を見ると、『現役としてこの年齢までできるんだ、年齢なんて関係ないんだ』と勇気をもらえますし、がんばる力が湧いてくる。僕も、先輩たちみたいにずっと歌い続けていきたいと、今まで以上に強く思うようになりました」