【いとうまい子さん・60歳】「不良少女と呼ばれて」から40年。45歳で大学生となり、今春、大学教授に就任!
昨年、還暦を迎えたいとうまい子さん。アイドルとして一世を風靡して40年。現在は研究者、大学教授、経営者、俳優、そして妻、と多彩に活躍。多忙でありながらどこでも自然体で、毎日を楽しく過ごしている、その秘訣を伺いました。
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PROFILE
いとうまい子さん 俳優
いとう・まいこ●1964年、愛知県生まれ。83年アイドルデビュー。
2010年早稲田大学eスクールに入学。修士課程では医療・福祉ロボットの開発に携わり、博士課程進学後は基礎老化学を研究。
現在、俳優、東京大学大学院理学系研究科研究生、情報経営イノベーション専門職大学教授、ライトスタッフとマイカンパニーの代表取締役。
「何ももっていない私」に気づき、一念発起
いとうまい子さんに転機が訪れたのは、芸能生活20周年を迎えた40代のこと。
「長く芸能界で過ごせたことに感謝し、恩返ししたいという気持ちが湧いてきたのですが、いざ足元を見つめると、そこには何ももっていない自分がいるだけ。何かひとつでも皆さまに恩返しできる土台がもてたら。大学に行けば何か得られるのではと思ったのがきっかけです」
たまたま仕事で関わった「予防医学」に興味があり、早稲田大学のeスクールに入
学。
「日本は国民皆保険制度があり、ちょっとした風邪や膝の痛みでも病院を頼ることができますが、本当はそうなる前に自分で自分の健康を守ることが大切ですよね。その重要性を正しく伝えられるようになりたいと思ったんです」
45歳からの学生生活は簡単なものではなかった。芸能の仕事も続けていたため、ロケとレポートや試験が重なって睡眠がとれず、帯状疱疹になってしまったことも。
「レポートの提出をサボっちゃおうと思ったことは何度もありました。でもそのたびに考えたのは、あなたは何のために大学に入ったの?ということ。あなたは何ももっていない。だから大学で何かを得て皆さまに恩返しをするんでしょ、と」
初心に立ち返ることでハードな大学生活を乗り切り、4年で卒業。大学院に進み、修士課程ではロコモティブシンドローム予防のための医療・福祉ロボットの開発に携わる。博士課程進学後は抗老化学に領域を移し、今も研究を続ける。
「私は父も母も亡くしているのですが、最後は歩けなくなって辛い状況を見てきました。やはり最後まで自分の足で歩けるのが理想ですよね。健康寿命を延ばすためにできることを研究し、それを人に伝えることができたら、やっと恩返しになるのかなと思っています。そこまでたどりつけるかどうか、やってみるしかないんですけどね」
「ヒューニング」で考え方の癖を修正
究者、俳優、制作会社経営など多くの顔をもついとうさん。今春からは大学教授の顔も加わり、情報経営イノベーション専門職大学で「ヒューニング」を教えている。
「楽器にチューニングが必要なように、人間(ヒューマン)にもチューニングが必要です。いつの間にかため込んだ考え方の癖を修正して悩みから解放され、本来の能力を最大限に発揮できるようにすることをヒューニングと呼んでいます」
たとえば嫌な人に会ったとき、嫌だ嫌だと思うのは時間の無駄。見方を変え、「この人を嫌だと思うということは、普段自分はどれだけいい人に囲まれているんだろう」と思えば、それを再認識させてくれてありがとうと逆に感謝の対象にもなる。こうした思考パターンはいくつもあり、身につけることで悩みから抜け出すことができる。
実はいとうさんは、アイドル時代に「地獄を味わった」という。意に沿わない仕事を拒否したことで事務所ともめ、退所後に仕事を干された経験をもつ。
「どん底に落ちたからこそ見えるものがあったんです。自分は一人では生きていないことに気づき、感謝の気持ちをもつこともできましたし、周囲の目を気にせず、自分らしくいればいいと思えるようにもなりました。学生たちにも、何かでつまずいたとしても、ただ辛い日々を送るのではなく、自分らしさを取り戻すすべがあることを知ってほしいと思っています」