【あんぱん】クライマックス直前!ヤムおじさん(阿部サダヲ)との再会に、嵩(北村匠海)が不在だった演出がまた嵩らしい
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田幸和歌子
主人公の名前は「ボオ氏」
そんな嵩の目を釘付けにして大きなヒントを得たのが、掃除機をかけるのぶがかぶっていた帽子だった。この帽子は、のぶたち三姉妹の父・結太郎の形見で、その後も何度となく登場し、のぶたちを優しく見守るようなアイテムだ。
「そうだ! ずっと主人公の顔がわからなかったんだよ!」
のぶのかぶる帽子に大きなひらめきを得た嵩は、これまでの苦悩が嘘のようにどんどんアイデアをふくらませていく。先の階段での「いごっそうになれ!」と同じく、過去のエピソードが伏線となり、その先へと自然といざなっていく。
主人公の名前は「ボオ氏」、何者でもない「某氏」と「帽子」をかけた粋なタイトルだ。こうして完成した懸賞応募作品『ボオ氏』は、見事大賞を受賞する。
「嵩さん、やったね! やりきったね!!」
視聴者も、のぶの喜びの声と同じ思いだったのではないだろうか。史実をもとにした朝ドラは、最終的な成功は知られているのに不思議とそういう気持ちになることが多い。その史実へのアプローチのうまさによって、物語として純粋に楽しむことができる。そういうことなのだろう。
ヤムおんちゃんとの何十年ぶりかの再会!
そして、冒頭に触れた、ヤムおんちゃんこと屋村も、八木の会社に孤児院に届けるためのパンを納品していたことで、唐突にのぶたちと再会する。それこそ何十年ぶりかもしれない再会で、嵩とのぶ、波多子(江口のりこ)が暮らすマンションに招かれソファに腰掛けるが、
「線路に寝てたあいつがこんな立派なマンションに住めるのか」
と軽口をたたきつつうれしそうなさまは、歳月が流れてもちっとも変わっていなさすぎて思わず笑ってしまった。
のぶに対して、
「ちび、おれはお前が一番心配だったんだよ。世の中がひっくりかえったあと、愛国の鑑はどうやって生きていくのか、立ち直れるんかとか」
と、内に秘めた本音を語ったところで、
「うちには嵩さんがおってくれたき」
とのろけるのぶ。
そこに、
「絶望の隣は、まんざら捨てたもんじゃなかったってことか」
と過去のセリフを思い出させてくれるように感慨深そうにする屋村という、これもまた、これまでのエピソードが活きる再会であった。ついでにいえば、この再会に、嵩が不在だったこともまた、嵩らしさを感じられる演出だった。
ついに誕生した、漫画家・やないたかしとしての〝代表作〟。そして次週のサブタイトルは「あんぱんまん誕生」。残り3週、いよいよクライマックスが近づく。
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