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認知症の家族と笑顔で過ごす【4つのヒント】ドキュメンタリー監督が母を介護して今思うこと

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ゆうゆう編集部

認知症の87歳の母と、支える95歳の父の姿を追ったドキュメンタリー映画、『ぼけますから、よろしくお願いします。』。撮影・監督した信友直子さんに、母の介護を通して変化していった気持ちや、今感じていることを伺いました。【後編】

▼前編はこちら▼

>>認知症の母の姿を撮影し、映画に。ドキュメンタリー監督【信友直子さん】「母が認知症になって父の素晴らしさに気づきました」

お話を伺ったのは
信友直子さん  ドキュメンタリー監督
のぶとも・なおこ●1961年広島県呉市生まれ。
東京大学文学部卒業。86年から映像制作に携わり、在京キー局でノンフィクション番組を多数手がける。
放送文化基金賞奨励賞、ギャラクシー賞奨励賞など、受賞多数。

老いて亡くなっていく姿を母は全部見せてくれた

映画が公開されると、信友さんのもとには多くの感想が寄せられた。なかでも印象に残った言葉があるという。

「認知症のお母さんを看取られた方が、『介護は、親が命がけでしてくれる最後の子育てだと思いました』とおっしゃっていて。私も本当にそうだと思います」

映画の公開から1年8カ月後、文子さんは入院先の病院で旅立った。コロナ禍だったが、良則さんと2人で見送ることができた。

「人が老いの坂を下って亡くなる過程を、母は全部見せてくれました。『あんたもいつかはこの道を行くんだから、お母さんがどういうふうに坂を下るのか見ておきなさい。そんなに怖いことじゃないんだよ』と教えてくれるみたいに」

文子さんの介護を経た今、信友さんが強く思うのは、「認知症の家族を、家族だけでかかえ込まない」ということだ。

「介護サービスを受ける前、母はうつ状態でした。反応がないので私もイライラし、介護サービスに反対していた父ともケンカになり、家の中は険悪な雰囲気に。それがデイサービスに行き始めたら、母に笑顔が戻ってきたんです。お友達ができて楽しかったみたい。家族が介護をしなくちゃと思い詰めず、人の助けを借りることをためらわないでほしいですね」

ケアする人に心のゆとりがなければ、患者本人にきつい言葉をぶつけてしまうかもしれない。「認知症の家族は自分で自分のきげんがとれる工夫をしなくちゃ」と、信友さんは感じている。

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