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認知症の家族と笑顔で過ごす【4つのヒント】ドキュメンタリー監督が母を介護して今思うこと

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ゆうゆう編集部

【信友さん流】認知症の家族と暮らす4つのヒント

認知症が進み、自分の知っている母ではなくなっていく姿を見つめ続けた数年間。
信友さんが見つけた、家族が笑顔で過ごすために大事なこととは?

①家族だけでかかえ込まない

もし私が介護離職していたら、母にすごくひどいことを言ってしまったと思います。家族だけで介護すると行き詰まって、結局矛先が介護される人に向かってしまう。そうならないためには、「認知症でも大好きだから安心してね」と、本心から言える余裕をもつことがいちばん大事だと思います。介護サービスを利用するのはもちろん、ご近所の方が手伝うと言ってくれたら、ありがたくお言葉に甘える。いただいたご恩は、「お互いさま」の気持ちで別の機会にお返しすればいいんだと思います。

②「認知症になってよかったこと」に気づく

介護が始まってから、自分のきげんは自分でとらなきゃと思うようになり、「母が認知症になってよかったこと」を探しました。それで、“母ファースト”の父は家庭人として最高だと気づいたんです。新聞をよく読むためか認知症や介護の知識をもっていましたし、今の時代の夫婦関係を知って価値観もアップデートしていたのかなと思います。私は母が大好きで、母とばかり話していて父は眼中になかったのですが、母が認知症になったからこそ、父のよさに気づけたと思うようになりました。

③変化を面白がる

母は、デイサービスで同じ女学校出身の認知症の方と出会い、毎回お互いに自己紹介して同じ話で盛り上がっていました。それを見て、「同じ話題でそんなに何度も楽しめるなんて、認知症って得なこともあるな」と思ったんです。一歩引いて見てみると、認知症の人は結構笑えるような行動もします。ちょっと不謹慎かもしれないけれど、それを面白がって親しい人に話してストレス解消するというのも、アリなんじゃないかと思います。

④自分の暮らしを犠牲にしない

私が実家に戻って介護をしたら、親戚やご近所から「いい娘だ」「親孝行だ」と言われたと思います。母の様子を見ているうちに、私も次第にそうしたほうがいいのかもと思うようになって、父に尋ねたことがあります。そのとき父が「介護はわしがやるけん、あんたはあんたの仕事をせい」と言ってくれて、仕事を辞めずにすみました。あのとき実家に戻っていたら、仕事への未練が捨てきれなかったでしょうし、映画もつくれませんでした。両親の笑顔も消えていたと思います。自分を犠牲にすることを「美談」にしないでほしい。介護が終わっても人生は続くのですから。 

観客動員20万人超えの大ヒット! 映画『ぼけますから、 よろしくお願いします。』

認知症であることに苦しむ母と介護する父の姿を、娘の目で追い続けた1200日の記録。続編『ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえりお母さん~』とともに、アマゾンプライムビデオなどで配信中。

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撮影/黒澤俊宏 取材・文/荒木晶子

※この記事は「ゆうゆう」2025年10月号(主婦の友社)の記事を、WEB掲載のために再編集したものです。

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