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【あんぱん】アンパンマン誕生秘話。一言のセリフもなく目の力と背中で表現する北村匠海の演技が見事だ!

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田幸和歌子

「真のヒーローは……」

そんなある日、嵩とのぶの家を訪れたのが、かつての「高知新報」の編集長、東海林(津田健次郎)だった。東海林は感慨深げに、「俺はあのころから、あいつ(嵩)のずば抜けた才能、買うちょったぞ」と、嵩の活躍を自分の手柄のように嬉しそうに語る。そんな東海林も、ひとつだけ腑に落ちない作品があるという。それが「アンパンマン」だ。
「あのおんちゃんはどういて、悪者を倒さんがな? どういてかっこよう空を飛ばん?」

その疑問に、のぶは、「正義を行うなら自分も傷付かねばならない」と答えた。
「強さをみせつけて敵を倒すがではなく、自分を顧みず、弱い人や困っちゅう人を救うがが真のヒーローではないかな、と思うがです」

それこそが、嵩にとっての正義の味方なのだと。こののぶの言葉を聞き、東海林は「やっと見つけたにゃあ」と嬉しそうに言った。それこそが「逆転しない正義」だと。
「あのころおまえらはおんなじもんを探しよった。それを何十年かかけてやっと見つけた。そうやにゃ」

そこに嵩が帰宅し、あらためて東海林は、二人が「逆転しない正義」をついに見つけたのだと言った。
「おまんらぁが長い時間かけて見つけたもんは、間違っちゃあせん。俺が責任を持つ」

太鼓判を押し、満足そうに東海林は去っていく。その後、高知新報でのぶと同期だった琴子(鳴海唯)から手紙が届く。そこには東海林が亡くなったことが記されていた。あのとき東海林は入院していた病院を抜け出し上京していた。そして二人に会い、二人が逆転しない正義をついに見つけたということを嬉しそうに語ったあと息を引き取ったという。

【あんぱん】アンパンマン誕生秘話。一言のセリフもなく目の力と背中で表現する北村匠海の演技が見事だ!(画像4)

「あんぱん」119回より(C)NHK

「アンパンマン」がついに登場した

「命を削って会いに来てくれたんだな」
東海林の思いに呼応するように、嵩の中に新たな炎が灯る。そして、紙の上に鉛筆を走らせはじめる。いつもの〝たっすいがぁ〟ではない内に秘めた強い決意を、一言のセリフもなく目の力と背中で表現するこの場面の北村の演技は見事なものである。

こうして〝太ったおんちゃん〟だったアンパンマンが、新しい姿で生まれ変わった。顔がアンパン、パンを配るのでなく、その顔を困った人に食べさせてあげる。そう、今なお多くの人々に親しまれるヒーロー、「アンパンマン」がついに登場した。まさに、待望の「あんぱんまん誕生」である。
「こんなヒーロー、初めて見た」
とのぶは言う。自分の顔を食べさせる、自己犠牲をともなうヒーローだ。

「たとえ自分の命が終わっても。大丈夫、アンパンマンの命は終わらない。続くんだ」

そして、「だめかな?」と、やはり少し自信なさげな嵩だが、
「そんなことない。うち、こういうヒーローずっと待ちよった気がする」

涙ぐんだ笑顔で、のぶは嬉しそうに言った。こうして新しい命を宿した『あんぱんまん』は、子供向けの絵本として刊行された。「逆転しない正義」を自らの命を削って実践するヒーローは、少しずつ広がりを見せていく。

【あんぱん】アンパンマン誕生秘話。一言のセリフもなく目の力と背中で表現する北村匠海の演技が見事だ!(画像5)

「あんぱん」第119回より(C)NHK

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