作家・角田光代さん「20代からひとり旅をしてきました」50代になって久々に出かけた旅先は?
写真では伝わらない、目で見たものの美しさ
「人がいなくて見放題でした。小さな建物なので、すべてが視界に入ってくるんです。眺めていると、人の手で施された装飾が緻密できれいすぎて泣けてきました。人はここまで美しいものを造ることができる、そして今、私はそれを見ることができる、それに感動したんだなぁと、あとから思いました」
スマホで撮影したモスクの写真を見せてもらうと圧倒される美しさ。だが角田さんは「写真を撮っても撮っても、その素晴らしさが写らない」と言う。
自分で足を運び、自分の目で見て感じる、に勝るものはないのだ。
角田さんにとって旅の醍醐味とは?と尋ねると、こんな答えが返ってきた。
「旅に出ると自分が常識だと思っていることは世界の常識ではなく、自分が正しいと思っていることが世界の正しさではない、と気づかされる。それが一番大きなことかなと思います。24歳のときにひとり旅をしてから、ずっともち続けている思いであり、旅から学んだことです」
その思いは作品にも深く影響している。角田さんの小説には、他人から見ると理不尽な行動をとる登場人物が、多く登場するが……。
「すべての人、他者から見てクズみたいな人であっても、その人にはその人の正義があり、その人がクズである意義があるって思うんです」
若い頃は1カ月ほど、何の予定も決めずに出かけ、長距離バスで移動し、安宿に泊まるバックパッカー的なひとり旅をしてきた角田さん。これからは、どんなひとり旅を?
「60歳を過ぎたら、またバックパッカーに戻るのが夢です。たいていの国は年配の女性にやさしいので、ひとり旅は親切にしてもらえるだろうから。ただし安宿ではなく、ちょっといいホテルに泊まります。若い頃虫が出るとか、マットレスがないとかいう安宿に泊まりすぎて、40代半ばくらいから安宿アレルギーになってしまったんです。安宿に泊まると悪夢にうなされるので!」
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撮影/中村彰男(人物)、角田光代(旅の写真)
取材・文/田﨑佳子
※この記事は「ゆうゆう」2025年10月号(主婦の友社)の記事を、WEB掲載のために再編集したものです。
