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「離婚・留学・そして出会い—」80歳の元ミス日本代表・谷 玉惠さんが綴る【私小説・透明な軛(くびき)#2】

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谷 玉惠

今年の夏、80歳を迎えた元ミス・インターナショナル日本代表、谷 玉恵さん。年齢を感じさせない凛とした佇まいは、今も人を惹きつけます。そんな谷さんが紡ぐオリジナル私小説『透明な軛(くびき)』を、全6回でお届けします。第2回は「離婚・留学・そして出会い」。
※軛(くびき)=自由を奪われて何かに縛られている状態

▼第1回はこちら▼

>>80歳の元ミス日本代表・谷 玉惠さんが今だから赤裸々に綴る【私小説・透明な軛(くびき)#1】

#2 離婚・留学・そして出会い

31歳の離婚。新しい挑戦へ

さかのぼること17年、知香は31歳のとき、見合い結婚で始まった10年間の生活にピリオドを打った。

商家である婚家の家族主義に馴染めず、長男の嫁として束縛される日々、何一つ意見が通らない立場や、日和見的な夫にも嫌気がさしていた。
「自分をもっと活かせる仕事につきたい」——その思いは30歳を迎えたころからさらに強くなり、社会に出られる最後のチャンスかもしれないと焦りさえ覚えるようになっていた。

夫と何度も話し合い、考え抜いた末に決断する。小学2年生だった一人息子を夫に託し、スーツケースひとつを持って家を出たのだ。

自分のわがままで家を出るわけだから、慰謝料は一切受け取らなかった。当座のアパートを借りるため、へそくりの10万円だけ手にしていた。この決断について、身内には一切相談しなかった。

数日間は息子の声が耳に残り、食事も喉を通らない日々が続いた。

救いとなったのは、知人の紹介で得た地方テレビ局のレポーターの仕事だった。結婚前に2年ほどモデルの仕事をしていたが、レポーターは初めて。しかも10年間、主婦一筋で過ごしてきた知香には知らないことばかりで、戸惑いの連続だった。悔し涙も何度となく流した。

心が折れそうになると、知香は湘南の海に向かった。ときには穏やかに、ときには雄々しくうねる海が、嫌なことを洗い流してくれた。
「息子に再会できる日が来たら、胸を張れる母でありたい」——その思いが、知香を決してくじけさせなかった。

仕事が2年目に入ったころ、知香はレポーターとしての仕事に行き詰まりを感じた。もっとレベルアップをするためにはどうすべきか——思い悩んだ末に、持ち前の向上心と冒険心が湧き上がり、突如フランス留学を思い立った。

英語よりは話す人が少ないフランス語のほうが、レポーターを続けるにしても需要があるかもしれない。そして、アメリカよりは馴染みのないヨーロッパの国、フランスでどう自分が生活できるのか——それにも大いに興味があった。

そうと決めた知香は、早速フランス語の個人レッスンを受け、留学の情報収集に動いた。ちょうど友人の知り合いにニース在住のフランス人がいることがわかり、万一の際の安心感もあって、ニース大学文学部の外国人講座科を選んだ。アルバイトをしながら1年計画で資金も貯め、準備を整えていった。

やがて留学資金が目標額に達し、レポーターの仕事も一区切りしたのを機に、離婚から3年目の1月、知香はフランスへと旅立った。
「お金を使い切ったら帰国しよう」と思いながらも、1年は滞在したいと考えていた。

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