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ザ・タイガースの脱退後21歳での決意【77歳・加橋かつみさんのターニングポイント#3】忘れられない母の言葉とは?

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藤岡眞澄

グループサウンズの全盛期を駆け抜けたザ・タイガースの元メンバー 加橋かつみさん。胸に残る「花の首飾り」は今も多くの人この心をとらえています。時代を代表する名曲を歌い上げた加橋さんの人生には、いくつものターニングポイントがありました。音楽と歩んできた道のり、そして現在について伺いました。第3回は、タイガース脱退後から今日、そしてこれから。

▼前回はこちら▼

>>名曲「花の首飾り」は30分で作られた【77歳・加橋かつみさんのターニングポイント#2】ザ・タイガースの舞台裏

タイガース脱退後、21歳の挑戦

——「ザ・タイガース」を脱退してすぐに、パリで制作したアルバム『パリ1969』を発表しています。曲作りはもちろん、スタッフの手配など、1人でやるのは大変だったのでは?

自分が思ったまま、あるがままに曲を作って、作詞をして、歌う。全く大変なことではなかったですね。

——でも、当時まだ21歳でしたよね。その若さでまとめるというのは……

立場的にも自然なことでしたね。

——時期を同じくして、ロックミュージカル『ヘアー』の日本初演も実現していますね。主人公のクロード役も演じられました。

フランスで所属したバークレーレコードのディレクターから、「『ヘアー』パリ公演のリハーサルをやっているから観てきたら?」と勧められたのがきっかけです。

舞台稽古を観ていたら、いきなりステージの上からプロデューサーが「東京で『ヘアー』ができないかな?」と持ち掛けてきた。断る理由はありませんでした。

——引き受けたからには何から何まで背負わなくてはならない。それでもやろう、と決断したのはなぜですか?

まず、歌がすばらしいんです。「アクエリアス」や「Let the Sunshine/輝く星座」など、みんなが知っている有名な曲もあります。

そして、『ヘアー』は主人公の若者が自分に届いた招集令状に火をつけて焼き捨てる印象的なシーンから物語が始まります。反戦のメッセージですね。

そのころのアメリカはベトナム戦争の真っ最中。あのミュージカルを見て、若い人たちが兵役拒否を始めたら、政府は困るはずなんです。でも、アメリカの若者たちは国家権力に屈することなく、『ヘアー』をやったということに僕は感銘を受けました。

ジョン・レノンが「イマジン」という名曲を作ったのも同じことだと思います。あの曲を歌われたら、反戦のムーブメントを止めることはできないですからね。

——2010年に『ヘアー』の日本キャストが集合して開催したライブで歌う加橋さんの弾けるような笑顔が印象的でした。

『ヘアー』に関わった時間は、ほんとうに楽しかったです。そして、“LOVE&PEACE&FREEDOME”という『ヘアー』の基本理念は、僕がずっと大切にしている言葉でもあります。

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