受診する病院を間違えて「死ぬ!?」法医学者が解説「命運を分ける勘違いとは?」
その〝勘違い〟が命運を分ける
もう一つは「胃がムカムカして痛い」という症状。「昨日脂っこいものを食べたせいか、胃がムカムカするな」と思い、近所の消化器内科クリニックを受診すると、「ウイルス性胃腸炎」とか「逆流性食道炎」などと診断を受けることがあります。そして、胃薬や痛み止めの薬を処方されます。
薬を服用するとムカムカや痛みは治まりますから、本人はほっとするでしょう。しかし翌朝、こちらも布団の中でご遺体として発見されるのです。
解剖すると、冠状動脈のうち、心臓の前を通る血管が詰まったことによる「心筋梗塞」であったと判明します。
この場合、心臓の下部分はお腹との境目である横隔膜と接しているため、心筋梗塞であるにもかかわらず、胃がムカムカするなどの症状が出るわけです。
しかし、消化器内科では、胃のムカムカや痛みを心筋梗塞からくるものとは判断しづらいでしょう。心臓は専門外だからです。
これまでの事例にも出てきたように、心筋梗塞を中心とした虚血性心疾患は、突然死の原因として最も多い疾患です。症状が出ている時点で適切な医療を受ければ、未然に死を防ぐことが可能な場合もあります。
受診する病院を間違えたがために亡くなってしまうことは、本人やご家族だけでなく、医療側も無念のひとことに尽きます。症状と疾患との正しい関連性が、社会的に広く認識されるよう願っています。
【このような危険を避けるには……】
・安易な自己診断を行なわない。
・気になる症状の場合は、総合診療医の診断を受ける。
・左肩や左腕の痛み、胃のムカムカや痛みは心筋梗塞かもしれないと疑う。
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