株式上場を果たしてパワーアップ! 介護施設の質の向上に貢献し、入居者とその家族に幸せを運ぶのが使命【笑美面社長・榎並将志さんのターニングポイント#3】
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ゆうゆう編集部
介護資格取得のための実習中に介護施設(シニアホーム)の重要性に気づき、シニアホームの紹介サービスをおこなう「笑美面(えみめん)」を創業した榎並将志さん。会社の成長を願う気持ちの根底には、「高齢者が笑顔でいる未来を守る」という創業当時からブレることのないビジョンがありました。
創業時よりもワクワクが上回った株式上場
――2023年には東証グロース市場(今後成長が見込まれる新興企業を中心とした株式市場)に上場を果たされたんですね。
はい。それも僕にとって大きなターニングポイントでした。社会課題解決を加速するために上場をめざしたいと、2016年ごろから勉強をはじめて準備をしていました。株式上場は証券会社、監査法人、証券取引所から認めてもらうことですから、世間からの評価やチャレンジできることが大きく変わってきます。
――念願叶っての上場だったのですね。
会社の立ち上げのタイミングをさして、「あのときがいちばん楽しかった」と振り返る起業家は多いんです。僕も創業時は「何でもやる!」という勢いがありましたし、ワクワクしましたし、きっとやれるという確信もありました。ただ、僕の場合、上場したときがそれを上回っていたんですよ。ワクワク感も「やるぞ!」という勢いも。これってすごいことだなと思っているんですよね。
――やはり企業にとって上場というのは相当大きな出来事なんですね。
上場をめざしたのは「笑美面」の成長のためです。「笑美面」が成長することで何が起こるかというと、サービス認知が広がりシニアホームへの理解が進みます。さらに、シニアホームに対する誤解による諦めを軽減でき、「ビジネスケアラー」や「老老介護」「ヤングケアラー」といった介護家族の介護負担解消にもつながります。僕たちはそういう啓蒙的な事業をしているという自負があるので、“啓蒙力”をもっと上げて、社会に対するインパクトを広げていきたいと思っています。
シニアホーム入居は就職や結婚に匹敵する重要なライフイベント
――榎並社長ご自身は、「笑美面」のシニアホームのマッチングサービスにはどんな強みがあると思っていますか?
とにかく「寄り添っている」ということですね。シニアホームへの入居は、就職や結婚などに匹敵するような重要なライフイベントだと思っています。学生がひとり暮らし用の部屋をパッと探して、ちょっと駅から遠いけれど我慢しようとか、そういうレベルではないですよね。絶対に正しい選択をしたいはずです。
シニアホームへの入居をそれだけ重要なものと捉えて、入居者さんの本心や不安を引き出して、どんな生活をしたいか、ご家族はどのような暮らしを願うのかという希望も引き出して紹介する必要があると思っています。
――前回お話いただいた「家族会議」などのプロセスを踏んで、ていねいにマッチングを進めているんですね。
そうですね。そして強みと思っていることはもう一つありまして、それは「再現性」です。未経験のスタッフが新たに加わっても、シニアホームのプロになり、諸問題を解決できるスキルを身につけて活躍してもらう仕組みを当社はもっています。当社で1年がんばってもらえると、離職するスタッフは少ないですね。
――「笑美面」にはシニアホームのマッチング事業のほかにもう一つ事業の柱があるんですよね?
はい。シニアホームの運営事業者と関連企業向けのビジネス「ケアプライムコミュニティサイト運営」です。シニアホームの運営事業者とのネットワークを生かして、シニアホームの経営に必要だったり、サービスが向上するようなシステムや商品の情報を提供しています。
シニアホームのサービスの質を上げることに貢献できれば、「高齢者が笑顔でいる未来」が実現できますし、介護家族にも前回お話したような「心の介護」に専念してもらえます。
介護は終わりのないもの。プロに任せて家族には「心の介護」に専念してもらいたい
――「笑美面」の事業はすべて「高齢者が笑顔でいる未来」につながっているんですね。榎並社長がこれからさらに取り組みたいことを教えていただけますか?
今後取り組みたいのは、47都道府県に「笑美面」サービスを届けること ですね。現在は10都道府県に 18カ所の拠点を持っています(2025年11月1日現在)。 日本全国の方にシニアホームのマッチングサービスというものがあることを知っていただいて、必要な時に寄り添った相談ができる体制をつくりたいと思っています。
もう一つ、介護事業を輸出産業にしなければいけないと思っています。制度や運営のノウハウなどは、海外から視察団が来るなど、広がりのきざしがありますが、僕が考えるのはプロダクト(製品)の輸出ですね。たとえば、介護士さんの負担を減らせるパワーアシストスーツ(装着型ロボット)や、排せつ予測機器などです。実際に僕たちが輸出をするのではなくても、情報発信の起点にはなれるのではないかと思っています。
――最後に、「ゆうゆう」世代の女性たちにメッセージをお願いします。
繰り返しになりますが、ご家族の介護を担っている方には「心の介護に専念してください」とお伝えしたいですね。介護は家族はやるものだという思い込みを持っている方や、家族をシニアホームに入れることに罪悪感を持っている方も多いと思うんです。
みなさんに心に留めておいていただきたいのは、介護は誰にでも当たり前にできるものではないということです。たとえば要介護5の方の介護を、フルタイムの仕事を持っている方が担うのは、プライベートの時間をすべてなくさないと無理です。介護というのは育児と違って終わりが見えないものです。日本には優れた社会保障制度がありますから、せっかくあるサービスを使っていただき、家族でないとできない「心の介護」で、当事者の方を幸せにしてあげてほしいと思います。
笑美面社長・榎並将志さんのターニングポイント③
「2023年に東証グロース市場への上場を達成。社会に対する会社のインパクトをさらに高めて、全国規模で必要な時に寄り添った相談ができる体制をつくりたいと思っています」
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榎並将志さん
えなみまさし●1984年年大阪府生まれ。祖父が興した不動産会社を22歳のときに父から引き継ぐ。2010年に介護施設事業への参入を検討し「笑美面」の前身となる会社を創業。2012年に「笑美面」へ社名変更し、高齢者とシニアホームのマッチング事業をスタートさせる。2016年に東京オフィス、2017年に福岡オフォスを開業するなど各地に拠点を広げ、2023年には東証グロース市場への上場を果たす。プライベートでは4児の父。
株式会社 笑美面 https://emimen.co.jp/
*毎週1回、さまざまな入居エピソードを紹介しています
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撮影/柴田和宣(主婦の友社) イラスト/ピクスタ 構成・文/志賀朝子
