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87歳の介護未満の父に毎月15万円の出費【ジェーン・スーさん・50歳】自身の”おひとりさま”の老後にも言及

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ゆうゆう編集部

自分の好きなように生きられているのはあの家庭に生まれ育ったから

介護未満のサポートを始めて5年。父は現在、87歳になった。骨折もし、ペットボトルの蓋が開けられないなど、できないことも増えてきた。その都度サポートのシステムを更新し、父娘のプロジェクトは継続中だ。大ヒットしドラマ化されたエッセイ『生きるとか死ぬとか父親とか』では、父への愛憎を綴った。今も父への想いは単純ではない。

「実は私自身、今も家族を持つことは恐怖なんです。それにはやはり自分の家庭、あの父が影響していることは否めません。でも同時に、私が自分の好きなように生きられているのは、あの家庭に生まれ育ったからこそだとも思うんです」

人間、最後はひとり。好奇心を道連れに

父は今、スーさんに老いる姿を見せてくれている。それに対処しながら、自分の老後にふと不安がよぎることがある。

「今の福祉制度がいつまで続くかわかりませんし、私には、私のような優秀な娘もいません。でも、それは誰でも同じなのかもしれませんね。人間、最後は結局ひとりだと思うんです」

パートナーがいようがいまいが、子どもがいようがいまいが、人は基本的にひとりだとスーさんは考えている。そこには、家族は依存する間柄ではなく、お互いに自立し、支え合うものだという想いが見える。

「自立というと、私にとってはどうしても経済的自立が第一に来てしまいますね。今、父のサポートに月15万円くらいかかっています。経済的には相当、依存されている形ですが、これは私が好きでやっていることなので。ただ、自分の老後のお金は自分で稼ぐしかありません」

ただしお金さえあれば老後が幸せかといえば、もちろんそうではないとスーさん。

「最終的にひとりになった自分を支えてくれるもの。それは好奇心ではないでしょうか」

本を読んだり、映画を観たり、習い事をしてみたり、小さなことでいいという。

「好奇心を持ち続けることで、人は元気でいられるのでは。子育てや介護など家族のために尽くしていると、自分の好きなことさえわからなくなったりしますよね。家事は上手にできるのに、自分自身の取扱説明書がないみたいな。かつては妻、母、女性であるだけで背負わされた役割が多く、それも仕方のないこと。でも最近『自分軸』という言葉が注目されるように、ゆうゆう世代にとっても自分自身を大切にすることはとても重要だと思います。健全な好奇心を発揮して、自分の人生を取り戻す。幸せに老いるために、ぜひ取り組んでほしいと思います」

ジェーン・スーさんの父親を尊重した介護未満ルール

①父親の人生を改善したり、状況をよくしようとしない
②父親の人生を後ろからサポートする気持ちで
③けんかしたり、怒ったりしない距離感を探る
④こちらがイラついたら他人の親だと思おう
⑤お互いのプロジェクトだという認識を共有する

Recommend Book! ジェーン・スーさんとお父さんの 「介護前夜」5年間の記録

介護未満の父に起きたこと

ジェーン・スー/著 新潮新書

日に日にできないことが増えていく80代の父と、そのケアに奔走した離れて暮らす娘。大掃除から食事や家事代行の手配まで、介護未満のサポートを詳細に綴った5年間の記録。二人のすれ違いや協力体制もつぶさに記され、介護、家族の新しい視点に気づくことのできる一冊。

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撮影/佐山裕子(主婦の友社) 取材・文/志村美史子

※この記事は「ゆうゆう」2025年12月号(主婦の友社)の記事を、WEB掲載のために再編集したものです。

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