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【ばけばけ】「抱きたいでしょ!」と詰め寄るフミ(池脇千鶴)。涙の告白から、ドタバタ喜劇への転換が絶妙![写真多数]

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田幸和歌子

【ばけばけ】「抱きたいでしょ!」と詰め寄るフミ(池脇千鶴)。涙の告白から、ドタバタ喜劇への転換が絶妙![写真多数]

「ばけばけ」第35回より(C)NHK

1日の楽しみは、朝ドラから! 数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。『怪談』でおなじみ小泉八雲と、その妻 小泉節セツをモデルとする物語。「ばけばけ」のレビューで、より深く、朝ドラの世界へ!
※ネタバレにご注意ください

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【ばけばけ】笑えない!実母(北川景子)の物乞いにはさすがに大きく心を突き動かされたトキ(髙石あかり)[写真多数]

ついにきたかとドキッとするが

日本に伝承される怪談をもとにした作品を発表したラフカディオ・ハーン(小泉八雲)と、その妻・セツをヒロインとした髙石あかり主演のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』の第7週「オトキサン、ジョチュウ、OK?」が放送された。

内容に則したストレートなサブタイトルである。現代では一部をのぞき「お手伝いさん」「家政婦」といった呼称のほうが一般的であるが、ヒロインのトキが英語教師ヘブン(トミー・バストウ)のもとで女中として働くかどうか、「女中」として求められているものは何なのかというものを軸としてストーリーが展開した。

銀二郎(寛一郎)との離婚後、松江に戻りしじみ売りとして地道に働くトキのもとに、あるとき錦織(吉沢亮)からヘブンの女中としての口を紹介される。異人であるヘブンの元へ行くということは、当時の感覚としてはラシャメンになること、すなわち愛人のような役割も求められるということとなる。月に20円という破格すぎる待遇が提示されたが、当然トキはその打診を断る。しかし、最終的に女中となることを決意する。その背中を押したのは、生みの親であるタエ(北川景子)が路傍で物乞いをする姿を目撃してしまったからである。

ある意味決死の思いでヘブンのもとを訪れたものの、当のヘブンはトキを見て鼻で笑うような失礼なあしらいをする。ルッキズムに対する感覚が変化し定着した現在ではありえないが、ヘブンはトキの脚を見せろ、腕を見せろと要求し、「ウデフトイ、アシフトイ」と切り捨てる。しかし、錦織がトキはヘブンに「ペリー、覚悟!」とばかりに木刀を振りかざした〝ラストサムライ〟の孫だと説明すると態度を急変、女中として採用される。

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「ばけばけ」第31回より(C)NHK

さて松江に来るまでは鬼か妖怪のような想像をされたり、ラシャメンとして家事以外のことも覚悟しなければならないなどといった異人との生活は、トキたちの緊張とヘブンが実際に求めるもののギャップがどこかすれ違いコントのような描かれ方で展開していく。

松野家の面々には、花田旅館が繁盛したからそこで女中をすることになったと、心配をかけさせないよう嘘をつく。花田旅館側はその事情を理解したうえで口裏を合わせるとともに、旅館の女中であるウメ(野内まる)ができるだけ二人きりにさせないようヘブン宅に滞在するよう仕向ける。ヘブンがもともとウメを気に入ってることで違和感もあまり生じないといういい采配だ。

しかし、それでもウメだってずっといられるわけもない。二人になったときにトキが緊張するなか「フトン」と言われたり「オフロ、ドウゾ」と言われ、ついにきたかとドキッとするが、どれも肩透かしのように、布団をたたんでおいてくれ、お風呂に普通に入りなさいというだけのことで、それ以上のことは何も求めない。入浴後相当ドキドキするものの「キョウ、オワリ」と解放されるだけ。視聴者側はそうだろうと思いながら見ているわけで、このちょっとした笑いは、本作の大切なエッセンスとなっている。

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「ばけばけ」第32回より(C)NHK

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「ばけばけ」第32回より(C)NHK

前週で触れられていたが、新任教師の給金が月に4円、そしてウメはわずか90銭である。そんななかでの20円は、あまりにも高額だ。先払いでこのお金を手にしたトキは、夜遅くにも押しかけるしつこい借金取りに5円を渡すなどする。

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「ばけばけ」第33回より(C)NHK

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