【ばけばけ】それは明らかに「嫉妬」では!?二人の距離が縮まる様子が自然に楽しい[写真多数]
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田幸和歌子
「ワタシ、ヤマイ! アナタ、ミマイ!」
そんなトキは、女中としてヘブンの看病を献身的につとめるわけだが、そこに小谷が居合わせる。前述の通り、小谷はトキのことを気に入っている。一緒にいたいのもわかる。すでにリサーチ済みのトキの怪談好きを利用(?)し、怪談の舞台に一緒に行かないかと誘い、トキも盛り上がる。そんな姿に、
「ワタシ、ヤマイ! アナタ、ミマイ!」
と、病床のヘブンは強めの口調で言い、小谷を帰らせる。
これまで少しずつトキへの「信頼」が深くなっていくさまが描かれてきたが、この信頼から、いつの間にかさらに別の感情が芽生えているのではないか。明らかに「嫉妬」とみられるヘブンの態度にそう感じざるを得ない。
やがて寒波も去り、トキの看病の甲斐もあって、ヘブンは回復する。あらためて小谷とのやりとりについての説明を受けたヘブンは、「OK」とあっさり受け入れる。それに対して、「私はただの女中ですが」と言いながらも、シジミの貝殻が閉じたような思いを抱くトキにもまた、何かの感情が芽生えている。
そんな感情の微妙な変化が描かれることによって、冒頭に記したような「いつになったら怪談を書くんだよ」といったことは、みじんも気になることもなく、二人の距離が縮まる様子を自然に楽しませてもらえている。
さて、トキと小谷のランデブー、その行き先はトキのかつての夫・銀二郎(寛一郎)とも訪れた清光院である。とはいえそんな思い出よりも清光院の周辺をめぐる〝怪異〟のようなものにあらためてテンションがあがってしまうトキの姿に、小谷は引いてしまったらしく、トキの気を引くための要素ととらえていた怪談も時間の無駄ととらえ、トキは、勝手にふられてしまうような結果となり、トキと小谷の恋愛的なエピソードは、やはりこのドラマらしくちょっとした苦笑とともに閉じることととなった。
そんな〝苦笑〟とは、ヘブンとトキの距離の縮まり方はまた違う描かれ方をする。ふたりの「ランデブー」の行方をヘブンが言葉にはせずとも気にしていることがちょっとした仕草や表情で伝える。
「ナンデモナイ……」
そんなヘブンの姿は愛おしく、ついつい応援したくなるところもこの作品の大きな魅力だ。ヘブンの怪談への取り組み以外、いずれは結ばれるであろう二人の距離も、「いつ縮まるんだ?」と気になることもなく楽しめる。
前作『あんぱん』もそういう傾向があったように感じるところもあるが、行方がわかっていることが、そこを見たいというよりも逆に「保証」のように安心して楽しめる展開の朝ドラだ。
この先も、どこかニヤニヤしながらふたりの行方を見守り続けられそうだ。
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