家電製品ほぼゼロ、ガス契約もしない【60歳女性ひとり暮らし】“お金がなくても幸せ”なライフスタイルとは?
家電を手放し、ガス契約もしない。1日の家事はたったの30分。稲垣えみ子さんが実践する「お金がなくても幸せになれるライフスタイル」とは、果たしてどんなものでしょう。
稲垣えみ子さん フリーランサー
いながき・えみこ●1965年愛知県生まれ。
元朝日新聞記者。2016年に退社し、都内で「夫なし・子なし・冷蔵庫なし・ガス契約なし」のフリーランス生活を送る。
著書に『家事か地獄か』『老後とピアノ』など多数。
猛暑の夏もエアコンなし。夜は意外に涼しかった
2025年の夏は記録的な猛暑で、稲垣さんは会う人みんなに心配された。「エアコンがなくて大丈夫ですか?」と。しかし本人は平然としている。
「私は行きつけの喫茶店で仕事をするので、日中は他人さまのエアコンで涼んでいます。家にいるのは夜から朝までだから、この時間帯が過ごせれば問題ないんです。ちなみにこの夏は、夜になると風が吹いて意外に過ごしやすかったんですよ。そんなこと、多分私しか知らないでしょうけど(笑)」
稲垣さんは築50年のワンルームに家電製品ほぼゼロで暮らしている。ガス契約はせず、カセットコンロで作る食事は一汁一菜。究極の節約生活!?と思われがちだが、違う。毎日喫茶店でコーヒーを飲み、夜は銭湯でゆったり。ケチくさくない。
「お金を貯めようなんて思っていないのに、お金がかからないのでけっこう余ってます(笑)。お金って、執着しない人には近づいてくるみたいなんです」
そんな稲垣さんだが、もともとお金への執着がなかったわけではない。何しろ50歳まで朝日新聞社の記者だったのだ。高額&安定の給与、高級マンションでの一人暮らし、ブランド服も高級レストランも堪能した。しかし新聞記者はあまりにハードワーク。やりがいはあるが心身の消耗も激しかった。
「40歳のときに『定年までの残り20年、このストレスにさらされ続けるのは無理だ』と気づき、50歳で会社を辞めることが目標になりました」
なくちゃムリ! なものを手放した稲垣さんの暮らし
冷蔵庫がない!
料理が趣味の稲垣さんだが、手の込んだ料理はしなくなった。野菜は干すかぬか漬けにして数日で食べきる。ご飯はおひつで保存するが、夏場は悪くなるので主食は麺類が中心。
エアコンがない!
熱帯夜でも眠るための作戦は、夕方に銭湯で盛大に汗をかくこと、特に暑い夜は床で寝ることの2つ。「風の気持ちよさに敏感になりました」。猛暑日は寝具など大物を手洗いするのが楽しみ。
洗濯機がない!
前日着た洋服を毎朝タライで手洗いして干すのが日課。たたんでしまい込むスペースがないので、下着の予備も最低限に。調理で使ったふきんや銭湯用のタオルはその場で洗って即干す。
