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「大人になったら絵描きさんになりたい」幼少期、ヤマザキマリさんが母から言われた言葉とは

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ヤマザキマリ

「この子は勇気がなかったからダメなんだ」

ただ、私には納得がいかなかった。そのころ、この本と同時進行で『アラビアンナイト』と『ニルスのふしぎな旅』を読んでいたのですが、どちらも自分の居場所から外へ出ていくことで、自分をたくましくしていく話です。

『フランダースの犬』の少年は私の趣味にはいかんせん脆弱(ぜいじゃく)すぎました。母には「この子は勇気がなかったからダメなんだ」と言ったそうです。誰かが助けてくれるのを待ち続けていたのがいけない。それが留守番ばかりさせられていた子どもの私の見解でした。

私はこの話を講演会など、さまざまな場でしています。ある日、SNSを見ていたら、アニメ版で少年と愛犬が大聖堂で力尽きてしまった有名な最終回のシーンの絵に、「パトラッシュ、疲れたよ。僕、もう疲れたよ。ヤマザキマリにいじめられるの、もう疲れたよ」と書いてあるものが目に入りました(笑)。

いじめているつもりはないんですよ。ないけれど、やはり絵描きで生きていくということは、そういった疎外と孤独、そして貧困、飢えといったものがセットでついてくるということなんです。母もそういうことを伝えたかったんだと思いますけどね。

フィクションですから本当にあった話ではありません。でも、表現というのは大変な生業なんだ、だからといってこの世から消えてしまってはいけないもの、ということはわかりました。孤独や貧困といったハードルがセットでも、人類の歴史の中で途絶えることはなかったのですから。

(注)
戦中派 第2次世界大戦中に青年時代を過ごした世代のこと。

『アラビアンナイト』 アラビア地方を中心とした民間伝承説話をまとめたもの。日本では『アリ・ババと40人の海賊』『アラジンと魔法のランプ』『シンドバッドの冒険』などの物語が有名。

『ニルスのふしぎな旅』  スウェーデンのセルマ・ラーゲルレーヴによる児童文学。14歳の少年ニルスが妖精によって小人にされ、ガチョウやガンの群れと旅をする。冒険を通してニルスが成長していく物語。

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※この記事は『最後の講義 完全版 漫画家・文筆家・画家 ヤマザキマリ』ヤマザキマリ著(主婦の友社刊)の内容を、ウェブ記事用に再編集したものです。

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