『わたしの書、頁を図る』で舞台初主演の【木村多江さん】自らも人間関係に傷ついた経験が。「孤独な主人公はかつての私」
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依田邦代
人と関わることでしか物語は生まれない
「役者は心の鎧を脱いで真っ裸になって、自分の内側のドロドロしたものをはき出すことで初めて、真に迫った演技ができるんだと気づかされた作品でした」
役者人生の一大転機とも言えるこの経験が、心のバリアを解いて再び人と関わるきっかけとなった。
「それでも裏切られると、やはり傷つきますよ。でも、不器用だった若い頃と違って、経験を積んだからこそ『まぁ、こんなこともあるよね』と受け流せるようになったのは大きいと思います」
同時に、助けられて心の底から感謝する経験も、木村さんの変化をもたらした。
「当時、子どもがまだ小さくて、育児と家事と仕事に追われ、いっぱいいっぱいだった私を、ママ友たちや友人、隣の家の人、商店街の人たちまでもが助けてくれました。おかげで何とか多忙な時期を乗り切れたのですが、そのとき、人が困っているときにパッと手を差し伸べてくれる人たちがすごくかっこよく見えました。自分もそういう人になりたい、いつか誰かに恩返しができるようになりたいと思うようになったんです」
人と関わり、困っている人には手を差し伸べたいと思えるようになった木村さん。
「そのためには人間的に成長することが必要で、すべてに感謝し、いとおしいと思えることが大切だと気づきました」
自分の人生のページをめくるのは、ほかでもない自分。1ページ1ページ物語を紡いでいくのは自分だ。「人との関わりの中でしか物語は生まれない」と木村さん。
町子もまた傷つくことをおそれてこもっていた殻からもがき苦しみながら脱し、新たな一歩を踏み出す。『わたしの書、頁を図る』は、観た人誰もが自分と町子を重ね合わせ、歩んできた人生をいとおしく思える物語だ。木村さん自身がそうであったように。
【Information】紀伊國屋書店創業100周年記念公演『わたしの書、頁を図る』
図書館職員として何の変哲もない退屈な時間を繰り返す柳沢町子。よく見かける利用客らの人物像や日常を妄想しては、また元の退屈な日常に戻る日々。しかし、自主映画を制作する青年の出現により、常連利用客たちの真の姿や想いを知ることとなり、激しく葛藤し、変化していく。誰もが持ちうるそんな葛藤を、新進気鋭の脚本・演出家がデジタルとアナログを融合し情感豊かに緻密に描き出す。表現力豊かな個性あふれる出演者たちの芝居、歌、演奏も見どころ。
7月3日(金)~19日(日) 紀伊國屋ホール
作・演出・美術:小沢道成
出演:木村多江/味方良介 光嶌なづな 中井智彦/坂口涼太郎 猫背 椿
▼https://watashinosho.jp/▼
撮影/中村彰男 構成・文/依田邦代
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