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朝ドラ『風、薫る』捨松(多部未華子)の「社会を変えたい」が直美の背中を押した瞬間

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田幸和歌子

「やっぱりりんさんがいてくれたら」

いっぽう、りん(見上愛)にも新たな岐路が訪れていた。新潟で女子寮の舎監をつとめるりんのもとを、医師の黒川(平埜生成)が訪れる。りんにもう一度看護婦にならないかと黒川は言った。帝都医大病院を出て黒川病院を継いだものの、新潟にはきちんと教育を受けたトレインドナースがいないと。そんな黒川の申し出をりんは断る。りんは、今も心の傷をひきずり、自信を失ったままなのである。直美が協会を立ち上げたことを報告する手紙にも、「応援しています」と返すのみで、看護の世界との壁を感じる。

そんななか、女学生が倒れ、そのときりんは自然とふるまい、やはり手が震えたりはするのものの、女学生を看護する。自信を失ったとはいえ、りんの心の奥底にある「看護」の炎はちゃんと残っていた。りんは、この件によって、自分の手が震えるのは、命に触れるのが怖いんだと思うと、その本質に向き合うことができた。それと同時に、りんの目の前に新たな岐路が訪れていることが示された。

朝ドラ『風、薫る』捨松(多部未華子)の「社会を変えたい」が直美の背中を押した瞬間(画像5)

「風、薫る」第89回より(C)NHK

直美が周囲の協力のもと立ち上げた「恵風看護婦会」ではあるが、やはり何事も「初めて」のものを理解されることは難しく、なかなか依頼は舞い込まない。会で一緒に活動してくれることになたかつての仲間、しのぶ(木越明)が思わずこう口にした。
「やっぱりりんさんがいてくれたら」

それは、周りの人たちも思うことであり、本心では直美もそれを求めていたかもしれない。そんなしのぶの、戻ってきてと言いに行くしかないという言葉、そして直美に思いを寄せる陸軍少尉の小川(甲斐翔真)にも、どうすればいいかを一緒に考えてくれる援軍を呼ぶという声にも押され、直美はりんの娘・環(英茉)とシマケンと一緒に新潟へと向かう。

朝ドラ『風、薫る』捨松(多部未華子)の「社会を変えたい」が直美の背中を押した瞬間(画像6)

「風、薫る」第90回より(C)NHK

直美はいきなり直談判するのではなく、りんとシマケンとの時間を作らせるような流れを作り出した。夕暮れの浜辺でシマケンは、この幸せな気持ちを表現する言葉が見つからないと笑う。

「いとしげ?」
りんは、新潟の言葉を口にする。もとはシマケンからの手紙に、新潟では「かわいい」や「美しい」といったニュアンスの言葉だと記していたものだ。その言葉に、
「愛おしいです!」
シマケンは叫んだ。そして、こう続けた。
「いつかこんな瞬間を書いてみたい!」

これこそが「いとしげ」そのものなのだろうという思いに包まれる。シマケンの思いもまた、ある意味「岐路」を迎えているのかもしれない。

肝心の本題、りんを再び看護の道に戻すということについてはまだ本格的に切り出せてはいない。りんと直美、二人はまだ岐路の中にいる。まさに「岐路にて」の状態だ。

直美が岐路で選ぶ道はもう決まっている。その道の先に、別の岐路から歩いてくるりんがいるのか。その行方を見守りたい。

朝ドラ『風、薫る』捨松(多部未華子)の「社会を変えたい」が直美の背中を押した瞬間(画像7)

「風、薫る」第90回より(C)NHK

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