朝ドラ『風、薫る』遺体だと思ったら動いた!中村倫也“藤次”の正体と、去り際に残した一言
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田幸和歌子
藤次を演じる中村倫也の強烈な印象
そんななか、廊下でむしろのようなものを掛けられ、りんが遺体だと思って処理しようとしたところ、「まだ生きてる」と動き出したのが、冒頭で紹介した藤次だった。東京から来た男性だといい、「私が持ち込んだんだ」と言う。外にいたのはそれゆえ責められることで、「むしろ私の身が危ない」というわけだ。こういったやりとりだけで他と患者たちとは明らかに違う、重要人物的な雰囲気を醸し出すのは、その演出ばかりでなく、藤次を演じる中村倫也の放つオーラも手伝っているように感じられる。
黒川やりんたちが懸命に対処するものの、医療と看護の手が足りず途方にくれそうなところに現れたのが、ほかでもない直美(上坂樹里)だった。
「駅で、近くで赤痢が出たって聞いて」
と、りんならここに向かっているという直感のもとやってきたと直美は言う。いわば自主的に派出されたようなものだろうか。ともあれ、りんにとって最も頼もしい〝バディ〟の登場である。
直美は看護をするいっぽうで、食事の用意すらままならなくなった現場のため、「私、行ってくる」と、村を訪れ調理の協力を呼びかける。最初は怪訝そうに見つめるばかりで何の反応もなかったものの、村人たちが自分たちの炊事場を使ってくれ、自分たちの食事を食べさせてあげてくれと現れる。不安と恐怖に包まれるしかなく、近隣の村人どうしで信じることもできなくなりかけていたなかでの団結は、直美たちの思いがもたらせたもので、これは感染症に苦しむ中での「黎明」といっていいことだろう。
そして、
「私は内務省衛生局の者だ」
すっかり回復したのか、小綺麗なスーツ姿で現れた藤次が直美に身分を明かす。現地調査に来たものの、自身が感染してしまったとのことだ。ここでの死亡率が1割に抑えられたという貴重な事例だったことを報告すると言う。
「世話になった」
こう一言だけ言い残して村を去っていく姿もまた、強烈な印象、作品の中に吹いた一陣の風のようであった。NHK朝ドラ公式の新たな出演者発表の際、「後にふたりの大きな壁となる」とあったが、この先再登場し、りんと直美にとってどんな存在になっていくのか。描かれ方に楽しみしかない。
看護と治療の成果か、アサも回復の兆しをみせ、退院が見込まれる。
「ずっと患者さんに触れるのが怖くて」
最大の危機を脱したころ、りんは直美に心情を打ち明けた。アサの手のぬくもりに生を感じたことがうれしかったという。
「直美さんと、看護婦としてもう一度一緒に働きたい」
りんはこう言った。直美は直美で自身が立ち上げた恵風看護婦会がなかなかうまくいかないと語る。そこへ黒川が、1年間黒川病院で働き、看護婦を育ててもらえないかという提案をする。
りんと直美、そして伝染病に対する向き合い方にも、黎明が訪れたといっていいだろう。その光が照らし出す未来は。次週を待ちたい。
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