肉ボールが白いブラウスを汚した日、林真理子さんは悟った「70代は同じ習慣のままでは危ない」
「80代になるとたいていボケるか死ぬ」——思わず二度見してしまうようなタイトルの本が、いま話題です。著者は、作家の林真理子さん。刺激的な言葉の裏側にあるのは、70代をどう生きるかという、実に現実的な思いです。『80代になるとたいていボケるか死ぬ。70代は神様から与えられた特別な時間』(幻冬舎刊)から抜粋して、林さんの本音をご紹介します。第1回は、事の始まり、肉ボール事件!
肉ボールが箸からころげ落ち……
還暦になった時、友人たちや編集者たちが盛大なパーティーを開いてくれた。流行りのレストランで数十人が集まり、みんなのプレゼントは真っ赤なドルチェ&ガッバーナのジャケット。
それを着て大きな拍手を浴びた私は、大きくみんなに微笑(ほほえ)んだ。実際楽しかった。
まだまだイケる、と信じて疑わなかった。
そして。2024年4月1日、70歳になった私は、お祝いパーティーをすべて断った。古希になったことを人に知られたくもなかったのだ。
それでも親しい人が、数人を招いてイタリアンで食事会を開いてくれた。おいしい料理に花束のプレゼント。しかし私の気持ちは晴れない。
「もうこれで本当のババアになってしまったんだ」
友人からLINEが来た。
「私も70代に慣れるのに二、三年かかりました」
そしてあの事件が起こったのだ。いつものように雑誌をめくりながらお弁当を食べていた。ホッとするひととき。もう何十年もこの習慣を続けていた。
が、肉ボールが箸からころげ落ち、私の白いシルクのブラウスを汚した。すぐに洗面所に行き格闘したが、ついに汚れはとれなかった。
そして私は知ったのである。
70代になったら、今までと同じことをしていてはいけない。
注意深く、何かと決別しつつ新たなステージに向かわなくてはいけないのである。
私はまわりの人たち(有名人も多くいた)を見ていて、ひとつの真実を得た。
80代になると、たいていボケるか死ぬ。ごくまれに、背筋もぴしっと伸びて頭もカラダもフル回転という方もいるが、あれは全くのレアケース。私らふつうの人間は、老いと直面しなくてはならない。それならばきちんと直面しようと、この本を書くことを思いいたった。
そうはいっても、ネガティブなことばかりではあまりにも悲しい。くよくよしてはダメ。
70代、頭もカラダもまだ大丈夫。それなりに蓄えも出来ている。神様から与えられた特別な時間。注意深く、楽しんで生きる。
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80代になるとたいていボケるか死ぬ。70代は神様から与えられた特別な時間
林真理子著
幻冬舎刊
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