親の「できること」まで奪っていない? 「先回り介護」を見直すサービス選び
「親のために」と思ってしていることが、実は親子を苦しめる原因になっているかも! 介護では、先回りして世話を焼くことが、必ずしもよい結果につながるとは限らないのです。これまで当たり前とされてきた介護の常識が、いま大きく変わりつつあります。介護のプロ・川内潤さんの新刊『介護前夜の教科書 親と自分の人生を壊さないための備え』(講談社刊)からお届けする第1回は、介護サービスについて。
Q. 介護サービスはたくさん使った方がいい?
A. 本当に必要なものだけを適切に使う
「お金さえあれば、手厚い介護サービスを受けさせてあげられるのに」。そう考えていませんか? あるいは、高級な老人ホームに入居させることが、子としての「最高の贈り物」だと思い込んではいないでしょうか。もちろん、お金があるに越したことはありません。しかし、さまざまな現場を見てきた私からお伝えしたいのは、「子が世話を焼くほど、かえって親が不幸になることもある」という意外な側面です。本人ができることまで、先回りして奪ってしまうことがあるためです。
ある親子のケース
かつて、月100万円もの費用をかけ、母親のために24時間365日体制で実家にヘルパーを依頼した長男がいました。彼の願いはただ一つ、「お母さんを絶対に転ばせないこと」。骨折して寝たきりになるのが一番かわいそうだからと、ヘルパーに料理、洗濯、掃除、買い物のすべてを「先回り」して代行させたのです。その後、お母さんは日中の活動が減り、一日をソファでぼんやり過ごすことが多くなったといいます。
これは、高いお金を払って、親の「生活の質」をわざわざ引き下げてしまった悲しい例です。支援を増やす一方で、本人が担っていた役割や、自分で体を動かす機会まで減らしていなかったか、振り返る必要があるといえるでしょう。
同じことは「良かれと思って」行うバリアフリー化にも言えます。家の中を段差一つないフルフラットにリフォームすれば、確かに家での転倒は防げるかもしれません。しかし、それは同時に「足を上げ下げする」という日常の筋トレの機会を奪うことでもあるのです。外に出れば、必ず段差があります。家の中を過保護にすると、皮肉にも外で転倒するリスクを高め、結果として寝たきりへのカウントダウンを早めてしまう。もちろん、必要があれば、適切な工事をすべきです。しかし、まだ元気で動けるうちからバリアフリー化をしてしまうのは、ちょっと待った、ということです。大切なのは、「危険をゼロにすること」ではなく、「その人らしい生活を保つこと」です。
