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【大奥5話】超肉食系の綱吉(仲里依紗)と右衛門佐(山本耕史)に心が弾む。欲望渦巻く極彩色の世界へ

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田幸和歌子

江戸時代の男女逆転の世界が描かれる、NHKドラマ10「大奥」。現在、NHKBS4KとNHKBSプレミアムで再放送中です。奇想天外なエンターテインメントに、毎週ひきこまれていく人も多いことでしょう。初放送時、数多くのドラマレビューを執筆するライター田幸和歌子さんに、NHK版「大奥」について語っていただいた記事をお届けします。
※ネタバレにご注意ください。

よしながふみ原作漫画×森下佳子脚本により、男女逆転劇の世界を描くNHKドラマ『大奥』の第5話が放送された。

江戸幕府3代将軍家光の身代わりとして春日局(斉藤由貴)に連れて来られた千恵(堀田真由)が、春日の死後、国を守るため、女の家督を許すことを宣言。自ら「女将軍・家光」となったのが第4話ラスト。しかし、そこで家光が救われたわけではなかった。

家光との子がどうしてもできない有功(福士蒼汰)は、部屋子の玉栄(奥智哉)に家光の側室となり、子をなして欲しいと懇願する。玉栄の子であれば、自分の子のように愛せると思ったためだ。玉栄は有功への忠誠心から、「俺の子は有功様の子や」「あんたには何が何でも俺との子を産んでもらわな、困るんや」と率直な思いを家光にぶつける。そんな玉栄について家光が「面白い男であったわ」と評し、有功が可愛がる理由がわかると言うのを、静かな微笑みをたたえて聞く有功が悲しい。

母となり、将軍となった家光は、大奥から100人の男をお役御免とし、吉原の「種付け」要員にして、吉原を安全で健やかに子を得られる場に生まれ変わらせようとする剛腕をふるっていた。次第に赤面疱瘡もおさまってきて、移り行く世を眺める家光の顔が、立派に為政者になっている。

一方、家光がようやく玉栄の子を授かり、喜んで有功に報告すると、有功は嫉妬のあまり、お暇を願い出て、無理なら手打ちにしてほしいと懇願する。心のつながりだけである不安と嫉妬、自身の「役割」がない虚しさ……。男女逆転の物語により、肩身の狭さ、よるべなさがより際立つ。

そこで家光が大奥を統べる役目「大奥総取締役」を有功に授けると、大奥の男たちに次々に役割を与えていく。流水紋を背負い、「水の流れのように、ここにありたい」と語った有功。上様の寵愛を受けられるのがごくわずかの者であり、誰もが嫉妬や深い悲しみを抱く中、自身に「役割」があるということが、生きる上でどれだけ支えになるかを深く理解している有功ならではの仕事ぶりである。

その後、家光は政に励みつつ、娘をもうけ、無理がたたって27歳で病に伏せる。有功の腕の中で「これで良かった」「心しかなかったから、お互いにとって唯一のかけがえのないものになれた」と家光が言い、最後の願いにより、「千恵様」と名を呼ぶ有功。さらに千恵の死により、影武者だった正勝(眞島秀和)も自害し、「二人で一人の身代わりの家光」の時代は幕を下ろした。

続いて、家光の長女・千代姫が四代将軍・家綱となり、有功が後見となるが、家綱は世継ぎがないまま死去。5代将軍は家光と玉栄の娘・綱吉/徳子(仲里依紗)となり、「五代将軍綱吉・右衛門佐編」がスタートする。この激変ぶりには驚き、と同時に、ワクワクしてしまう。

なにしろ綱吉は「当代一の色狂い」で、3000人の男をとっかえひっかえしつつも、大奥にも飽きてしまい、お城の外で男漁りを楽しむ超肉食系である。

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