熟年離婚したいけれど、まとまった財産がありません。坂東眞理子さんのすっきり人生相談
相談②
夫と熟年離婚したいけれど……
私は跡取り娘(家業は廃業しました)、夫は婿養子。子どもは独立し、今は夫婦ふたりの生活です。夫とは昔から性格や趣味が合わず、あまり会話もなく、一緒にいるのが本当にストレスです。ただ離婚をしても、家を売らなければまとまった財産もないし、夫と私の年金を合わせて、人並み程度です。どうすればいいでしょう?(66歳・無職)
離婚は損。夫と一緒に過ごす時間を減らし、「卒婚」を目指して
どちらか外で働くのも手
相談者もおわかりのように、離婚するのは損。だから離婚はせず、卒婚=結婚を卒業するのがおすすめです。安いセカンドハウスを手に入れるなどして夫と住まいを分けるのが理想的ですが、生活コストが2世帯分かかるので難しいかもしれませんね。そうなると、なるべく一緒に過ごす時間を少なくする方法を考えなければなりません。
まずは夫が家にいない状況をつくり出すこと。たとえば仕事です。定年退職後でも、マンションの管理人や工事現場の保安要員など、高齢男性向けの仕事はあります。そうした仕事を夫にしてもらい、家から離れる時間をつくってもらいましょう。今、東京都の最低賃金は時給約1100円。1日5~6時間で週4日働けば月に約8万円、年100万円ほど稼げます。
「年金だけで暮らすのは心もとないから、少しだけ働いてみない?」と夫に相談を。
そこで夫が働きたくない、ずっと家にいたいと言うのであれば、次の案として相談者が外に出ることを考えて。まだ66歳なのですから、パートでもいいので仕事を始めてみてはいかがでしょうか。コツコツ働いてパートのお給料を貯めれば、安いセカンドハウスが買えるようになるかもしれません。
年老いてから気の合わない人と顔を突き合わせるのは苦痛なので、別々の生活の場やひとりの時間を確保することが大事です。ただし子どもの家は頼らないこと。「ふたりで仲よくしてよ」と言われるのがオチですから。夫婦の問題は夫婦間で完結させましょう。
熟年離婚をするより、夫を看取ったほうが妻はトクする
離婚すると、専業主婦の妻は、夫の厚生年金の報酬比例部分の2分の1(※1)を受け取れる。夫が亡くなった場合、妻の相続分は最低でも相続財産の2分の1(※2)となる(遺言がない場合)。
※1
●離婚時の年金分割制度
年金分割制度には「合意分割」と「3号分割」の2種類がある。2008年4月1日以降に国民年金第3号被保険者(専業主婦・主夫)である場合、3号分割は配偶者の同意なく請求でき、厚生年金の報酬比例部分の2分の1が妻の取り分となる。
※2
●夫が亡くなった場合の、配偶者(妻)の法定相続分
子どもがいる場合……相続財産の2分の1
子どもがおらず、夫の親が生存している場合……相続財産の3分の2
子どもがおらず、夫のきょうだいのみが生存している場合……相続財産の4分の3
※この記事は「ゆうゆう」2023年11月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のため再編集しています。
女性の覚悟
坂東眞理子著
主婦の友社刊
「50代、60代はまだまだ若い。可能性はいくらでもある。けれど責任をもって生きていくという覚悟が必要です」という坂東さんのエールがぎゅっと詰まった一冊。すぐにも実行できる、しなやかに人生を生き抜くための方法やヒントがいっぱいです。