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【60代からの友達づき合い】エッセイスト・岸本葉子さん「共通の趣味があればプライベートを知らなくてもOK」

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ゆうゆう編集部

友達は人生を豊かにしてくれる素敵な存在。でも、子どもの独立や夫の定年など、ライフステージが変化するゆうゆう世代では人間関係も変わっていきます。年を重ねて体力や気力も変化します。そんな中で、心地いい友達づき合いを続けるためのヒントを、エッセイストの岸本葉子さんに伺いました。

お話を伺ったのは
岸本葉子さん

きしもと・ようこ●1961年、神奈川県生まれ。東京大学教養学部卒業。生命保険会社勤務、中国留学を経て文筆活動へ。近著の『60代、ひとりの時間を心ゆたかに暮らす』(明日香出版社)、『60代、変えていいコト、変えたくないモノ』(中公文庫)他、著書多数。

47歳から始めた俳句を1冊に。初の句集『つちふる』

還暦を機に上梓した岸本さんの第一句集。俳句を始めた2008年から20年まで、約12年間の作品の中から厳選した349句を収録している。 
発行:角川文化振興財団/1980円

プライベートは知らないけど共通の趣味はとことん深掘り

「60代を節目としたわけではありませんが、近頃は浅く広いおつき合いが多くなっています」

そう話す岸本葉子さん。

「もともと友達が少なく、深くつき合わないほう。仕事はこの人が理解者、俳句はこの人に相談できる、ダンスはこの人たちとが楽しい……。ひとりの親友と全面的に深くではなく、ジャンルごとにいい関係の人がいる状況です」

主なつき合いは趣味を通して知り合った仲間たち。

「1つは40代から始めた俳句の仲間。俳句はひとりで作るよりも、句会という形で集まり、句を出し合って楽しみます。私は4つの句会に参加していますが、会によってはオンラインのみだったり、季節に1回対面するだけだったりいろいろです」

句会の仲間は年代もさまざまだが、俳句に関して会話が弾む。

「句会では、無記名で提出された句の中から好きな句を選びます。『私はこの句のこういうところが好きでした』『これ、いいわよね』みたいな話をし、『では誰の句でしょう』と作者が明かされると、またそこで『え〜、意外!』などと盛り上がる。俳句のことだけで3時間でも4時間でも話が続くんです。『俳縁は一生モノ』と実感しています」

そしてもう1つ、楽しく交流を続けているのが、コロナ禍の2021年に入会したジムのダンスフィットネスのレッスン仲間。

「顔を合わせる頻度は家族以上です。ときどきスマホで先生と一緒に写真を撮る人がいて、『写真を送るのでLINEでつながりましょう』と言われて交流が始まりました。言葉を交わす機会はあまりないけれど、先生の動きについていくために必死で体を動かして、最後に汗をかいたまま一緒に写真を撮る。一体感と連帯感があります。レッスンが終わればパッと解散して、お茶を飲みに行くことすらないのですが、それでもホームだわと思えるんです」

俳句やダンスフィットネスという共通の趣味でつながり、お互いのプライベートはほとんど知らないのだという。

「どちらの集まりでも、親の介護や自身の病気などで休む人が出てきます。『今日はいないな』『どうしたのかな』と、それとなく気遣いますが、こちらからは詮索しません。そして戻ってきたら、昨日の続きのように自然に受け入れます。今後もし自分に何かあったときに、何事もなかったように帰れる場所があるっていいなと思っています」

LINEの連絡先は知っているけれど、趣味に関係のないことで連絡を取り合うことはない。どこに住んでいるのか、どんな家族構成なのか、仕事をしているのかいないのか、知らないままでも心地いいつき合いは続く。

「好奇心がなくはないけれど、そういった情報がなくても十分、一緒にいる時間を楽しめる。そんなゆるやかな関係が心地いいです」

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