【伊藤比呂美さん最新作】60代で初めての一人暮らし。 ぽかんと空いた「何か」を埋めてくれた存在とは?『野犬の仔犬チトー』
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ゆうゆう編集部
犬猫たちがいてくれるから見える世界がガラリと変わる
伊藤さんは娘2人を連れてカリフォルニアに渡り再婚した後、シェパードのタケを飼い始めた。
「当時、二女は13歳で、あまりにも不適応であまりにもひとりぼっちでした。それでタケをもらってきたのですが、これが最高でした」
タケは優しかった。映画を見て泣く伊藤さんの頬をなめてくれた。それを二女に言うと、「うん、タケは泣いていると来るよ」と答えた。
「ドキッとしました。この子、一人で泣いていたんだ、それを犬がなぐさめてくれていたんだって。本当にありがたいものだなって心から思いました」
未知の世界も見せてくれた。
「タケと散歩すると、カリフォルニアの広大な自然が次々に現れました。岩や草や花々、月や星……私は自然が好きだったと思い出しました。今は熊本の自然の中をクレイマーと歩いています」
本書を読むと、「犬や猫を飼いたい」という気持ちがむくむく湧いてくる。でも、ゆうゆう世代では難しい?
「そんなことはありません。年をとればとるほどおすすめです。犬との散歩は体を健康にしますし、猫がひざにのると気持ちが穏やかになります。愛されて必要とされるから、自分のことも愛おしくなる。世話は大変ですが何とでもなります。ただし、自分が死んだ後の、犬猫たちの引き取り手だけは探しておきましょうね」
伊藤さんは、チトーが死ぬまでは死ねないという。
PROFILE
伊藤比呂美さん
いとう・ひろみ●1955年、東京都生まれ。詩人。
女性詩ブームを牽引するかたわら、自らの体験を綴った『良いおっぱい悪いおっぱい』などの育児エッセイが世の母親たちの共感を呼ぶ。
2018年春、二十数年に及ぶカリフォルニア生活を引き上げ、早稲田大学文化構想学部教授を3年間務める。
現在、熊本在住。
※この記事は「ゆうゆう」2024年10月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。
取材・文/神 素子
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