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【伊藤比呂美さん最新作】60代で初めての一人暮らし。 ぽかんと空いた「何か」を埋めてくれた存在とは?『野犬の仔犬チトー』

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ゆうゆう編集部

シニア一人暮らしの多頭飼い。何でこんな苦労を?

米国カリフォルニアで暮らしていた伊藤さんは18年春、熊本に戻ってきた。早稲田大学で3年間教鞭をとることになり、ジャーマン・シェパードのクレイマーをつれて帰国したのだが、その2年後にコロナ禍となった。

「ずっと家の中にいる生活なんて初めてだったので、実はうれしかったんです。これからは家で思う存分植物や動物の世話ができるって。それで猫も2匹飼い始め、犬がもう1匹いてもいいなぁと思って……それがチトーです」

当時60代半ばの伊藤さん、一人暮らしでの多頭飼いは世話をするだけでもひと苦労だ。コロナ禍が落ち着くと東京や海外に行く仕事が増え、そのたびに世話をしてくれる人を手配する。なぜこの年齢でそんな苦労を?

「って、よく言われます(笑)。80代の夫を看取り、娘たちは独立し、人生初の一人暮らし。何かがぽかんと空いちゃったんです」

犬猫たちはどんな存在なのでしょうか?

「私は育てることがめっちゃ好きなんです。産んだ覚えはないんだけれど、彼らは限りなく家族に近い。人間の子どもは常に私より若くて成長していく存在ですが、犬や猫は3倍速、4倍速で成長し、老いて死ぬ。彼らの命を引き受けているんだと実感しています」

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