【近藤史恵さんの最新小説】妻と離婚後、男性専門の「家事学校」に入学。そこで学んだこととは?『山の上の家事学校』
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ゆうゆう編集部
男性だけが入れるという「家事学校」を舞台にした近藤史恵さんの最新小説『山の上の家事学校』。そこでは、料理や掃除、洗濯だけでなく、人生を自分の力で守っていく方法が学べるといいます。主人公・仲上は果たしてどのように変わっていくのでしょうか?
家事を担うのは損なのか? 何もできない人の損失とは
家事とは何ですか?
長年家事を担ってきた(であろう)ゆうゆう世代の女性たちでも、この問いに即答するのは簡単ではない。しかし、この物語に出てくる山之上家事学校の校長・花村先生の答えは明快そのものだ。
「家事とは、やらなければ生活の質が下がったり、健康状態や社会生活に少しずつ問題が出たりするのに、賃金が発生しないすべての仕事」。にもかかわらず「賃金の発生する仕事に比べて、軽視されやすい」と喝破する。読みながら、「そのとおり」とうなずいてしまう。やらなければ家庭は大変なことになるのに、報酬がないから軽んじられる。しかも休日はないし、女性に押しつけられがちなことも腹立たしい。
「でも、実際に貧乏くじを引いているのは家事を担う人だけではないはず。家事をしないことで、実は男性も不利益を受けているのではないか、と思うようになりました」と、近藤史恵さんは言う。
2020年の国勢調査などによると、結婚していない中高年男性の死亡率は、他の世代・性別と比較して高い。同年代の既婚男性と比べ死亡率は2.8倍になるという。死亡原因別だと糖尿病は7.5倍、高血圧性疾患は6.8倍に。生活習慣病の高さから生活の乱れっぷりが予想できる。
「既婚男性でも、妻に先立たれた男性は死亡率が高くなります。これは、家事スキルを身につける暇もなく働かされた男性たちがこうむった“損害”といえますよね」