「光る君へ」紫式部のモデルは誰?光源氏のモデルは道長か?『源氏物語』の登場人物を考える
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鷹橋 忍
NHK大河ドラマ「光る君へ」が佳境を迎え、吉高由里子さんが演じる紫式部の筆もどんどん進んでいます。光る君のモデルはいったい誰なのか? 気になりますね。『源氏物語』の登場人物のモデルとされる人物について、作家 鷹橋 忍さんに、ご紹介いただきましょう。
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今回は、『源氏物語』の登場人物のモデルとされる人物を、大河ドラマ『光る君へ』の登場人物の中から、ご紹介したいと思います。
光源氏のモデルは道長?
一番に気になるのは、『源氏物語』の主人公・光源氏のモデルではないでしょうか。
紫式部は、複数の実在、もしくは架空の人物の特性を組み入れて、作中の人物を造形しているので、光源氏のモデルも一人ではないと考えられています(小池清治『『源氏物語』と『枕草子』 謎解き平安ミステリー』)。
光源氏のモデルといわれる男性は何人も存在しており、藤原道長も、その一人です。
三浦翔平さんが演じた藤原伊周も、モデルの一人に挙げられています。
ドラマでは執拗に道長を呪詛するなど、敵役のイメージが強いかもしれませんが、伊周は容姿に優れ、漢学にも通じた、光源氏のモデルにふさわしい完璧な貴公子です。
光源氏は須磨へ流されますが、それはドラマでも描かれた長徳の変後の伊周の流罪事件に影響を受けて書かれたともいわれます。
光源氏の前半生(十二帖「須磨」、十三帖「明石」まで)が伊周、その後は道長がモデルとする見解もあります(手塚昇『源氏物語の再検討』)。
他にも片岡千之助さんが演じる敦康親王(一条天皇と中宮定子の皇子)や、道長の妻の一人である瀧内公美が演じる源明子の父・源高明(醍醐天皇の皇子)も、モデルではないかといわれています。
一条天皇は桐壺帝のモデル?
光源氏の父・桐壺帝のモデルは、醍醐天皇とされます。
ですが、塩野瑛久が演じた一条天皇と高畑充希が演じた定子は、桐壺帝と光源氏の母・桐壺更衣の姿に重なるともいわれます。
桐壺更衣は亡父が大納言とそれほど身分が高くはなく、後見が弱いにもかかわらず、桐壺帝から寵愛され、第二皇子となる光源氏を産みました。
第一皇子は桐壺帝の女御である弘徽殿女御の子です。吉田羊さんが演じた藤原詮子は、この弘徽殿女御のモデルの一人といわれています。
桐壺の桐壺更衣に対する寵愛ぶりは、「世が乱れるのではないか」と危惧されるほどでした。
他のキサキたちに憎まれ、陰湿な嫌がらせを受けた桐壺更衣は、心労が積もって衰弱し、光源氏が3歳の時に、亡くなってしまいます。
一方、定子は父に井浦新が演じる関白・藤原道隆を持ち、実家である中関白家は繁栄していましたが、長徳の変後、実家は没落。
それでも一条天皇は、世間から非難されるほど定子を寵愛し続けますが、定子は敦康親王ら子どもたちを残して、24歳の若さで薨じました。
こうした点が、桐壺帝と桐壺更衣は、一条天皇と定子に重ねられているといわれるのでしょう(角田光代 山本淳子『いま読む「源氏物語」』)。
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