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ある意味リアルな描写なのか!?【おむすび】もっと知りたかったのは描かれない苦労や努力だ

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田幸和歌子

結が一人だけ歩くというシュールなカットが話題に

病院編になり、管理栄養士という役どころが逆に作品の展開に無理を生じさせ、結が時折看護師のような立ち位置にいるように見えたりすることも多々あるのだが、「食」という縦軸のため栄養士である必要もあり、それが立ち位置の描き方の難しさにつながっているのだろう。

見ているだけの情報だと、結がやっていることはアイデアを出して提案、患者やスタッフの話を聞く、途中から配膳も行うようになった、そのぐらいである。それでいて、家で何もできずそのままソファーに倒れ込むほど疲れ切る激務(らしい)。きっと描かれていない大変な業務に追われているのだろうと語りと想像で補完するしかないのだろうか。

家庭内でもソーシャルディスタンス、離れて暮らす家族とリモート通話、手作りマスク、ステイホームだからこそネット通販に脚光……箇条書きのようになってしまうが、コロナ禍の時ってこうだった、あったあったみたいな「要素」を、それこそ箇条書きのように並べてみせたといった印象を受けるコロナ禍の描き方だったことは確かである。

「おむすび」第114回より(C)NHK

娘の花ちゃん(宮崎莉里沙)や夫の翔也(佐野勇斗)との感染防止のための別居生活も、最も身近な家族と取らざるを得なくなってしまった「距離」によって、家族との絆を強く感じさせる大切な要素だと思うが(ほぼ無人のゴーストタウンのような交差点を結が一人だけ歩くというシュールなカットも話題になった)、これまでも結がそれなりに忙しいことで、母娘の距離の近い場面があまりなかったことから、どうしてもとってつけた感が生じてしまったところも難しいところだ。

今週ラスト、緊急事態宣言が解除され、結と花がようやく笑顔で思い切りハグできるようになってよかったよかったという雰囲気で締め括られた。医療現場の奮闘も一段落といった空気も流れていた。しかし、この「令和2年6月」から、実際のコロナ禍は、その後ウイルスは変容をとげ、何度も「第◯波」となり猛威を奮い続けさらなる困難が続くこともなかったことになりそうで少し不安になった。

もっとも、その後のことなど予想がつくわけもなく、最初に宣言が解除されたときの安堵感はこのぐらいのものだったかもしれず、そういう意味ではリアルな描写なのかもしれないが。

残り2週、「ほぼ現在」となる世界を結たちがどう見せてくれるのか。どう着地に向け展開していくのか。行方を見守りたい。

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