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永吉(松平健)も『おむすび』ヒロインのような存在だったか!残り1カ月の結(橋本環奈)が羽ばたいていく先は?

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田幸和歌子

永吉(松平健)も『おむすび』ヒロインのような存在だったか!残り1カ月の結(橋本環奈)が羽ばたいていく先は?

「おむすび」第105回より(C)NHK

1日の楽しみは、朝ドラから! 数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。平成青春グラフィティ「おむすび」で、より深く、朝ドラの世界へ!
※ネタバレにご注意ください

▼前回はこちら▼

北村有起哉の名演技が光る【おむすび】「結ちゃんすごい」がもはやほほえましく感じられるようになってきた

「因縁の」万博記念公園へと足を運ぶふたり

橋本環奈主演のNHK連続テレビ小説『おむすび』第21週「米田家の呪い」が放送された。

サブタイトルは、言うまでもなくこのドラマのテーマ性のようなものを象徴するフレーズだ。困った人がいたら後先考えず行動してしまうという米田家のDNAのような性分らしく、第1話から米田家の面々が他人のために何かをするたび、節目ごとに何度となく登場してきた。この〝呪い〟はどのぐらい先祖代々受け継がれたものかどうかはわからないが、ドラマ内の現米田家の源流は、ヒロイン・結の祖父、永吉である。

ところでこの永吉と妻である佳代(宮崎美子)は、父親の聖人(北村有起哉)らが、糸島から神戸に引っ越して以来、ぱたりと姿を消した状態になっていた。神戸の米田家の面々も糸島に帰省している様子もほぼ感じられず、結の結婚や出産など人生の転機にもその姿(というか気配すら感じられないぐらいに?)は見ることができなかった(糸島にずいぶん帰ってないみたいなセリフも過去に登場したが)。聖人ががん手術にあたり、手術が成功したら「糸島に家族揃って行きたい」と願うほどに縁遠い場所なのか、糸島は。

「そして時は流れ」といった、リリー・フランキーの語りとともに、サクサクスキップしていく本作。舞台は平成後半となり、結は管理栄養士として活躍してキャリア4年目、結の娘・花(宮崎莉里沙)も小学生となったが、果たして永吉と佳代はどうしているのか。

昔の漫画で、連載が進み新たなキャラクターや展開が進むうち、初期のレギュラーが「忘れられたキャラクター」化してしまうことがときおりあったことをなんとなく思い出してしまったが、意図やねらいがあってのものなのか、神戸米田家を中心に描くうちに自然に「忘れられたキャラ」になってしまったのかわからないが、その行方はずっと気になっていた。

かと思いきや、前週ラストで唐突に神戸米田家のドアホンが鳴り、永吉と佳代が唐突に、しかも今までとなんら変わらぬものすごく元気な笑顔で揃って再登場してくれた。ここももはや本作お約束となった、何度目かの〝アポ無し〟訪問だが、かつて本作の空気を「新喜劇的」と書いたことがあったが、新喜劇の「邪魔すんでー」と唐突に登場するようなものととらえれば、さして気にすることではないか。

「おむすび」第101回より(C)NHK

ところで、この永吉と聖人の父子の確執が、本作序盤に重要なテーマとして描かれていた。1970年に開催された大阪万博で永吉が家を出たきりずっと戻ってこなかったこと、聖人の大学進学用のお金を使い込んでしまったことなどは二人の間に大きな溝を生んだままになってしまった。聖人が糸島を出て神戸に移り住んだことも、そこに所以する。

永吉は、「ホラ吹き」キャラという扱いでもあった。とはいえそれは「王選手に一本足打法のヒントを与えた」「初代引田天功のアシスタントをしていた」「猪木に寝転がって戦えと言った」「ラモスにループシュートを教えた」「紅白出場の演歌歌手にアドバイスした」などなど、思わず友近と近藤春菜の「◯◯に△△をやれって言ったの、オレだよ」というコントばりの荒唐無稽、陽気なホラ話のような扱いであった(聖人にとってはそれがまた神経を逆撫でしたわけだが)。

久しぶりに神戸米田家と再会し、永吉と聖人は二人で「因縁の」万博記念公園へと足を運ぶ。いろいろあったが、血の繋がった父子である。さすがに齢を重ね、少し弱くなった父の姿を実感する息子。よく晴れた公園の中、太陽の塔の間近で二人きりですごす姿が描かれ深い深い溝が少し埋まったかなという空気の中、永吉はこの世を去る。

「おむすび」第103回より(C)NHK

「おむすび」第103回より(C)NHK

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