「終活はしない。同調圧力を感じるわ」(内館さん)【内館牧子さん×吉永みち子さん対談】
ホームに入居しても 相撲と競馬があれば大丈夫(内館さん)
吉永 でもさ、それが人間なんじゃないの? 華々しく仕事をして、周囲に認められて、それがだんだん世代交代していって、静かに老兵は消える。そういうものだと私は思うけどね。
内館 そう理路整然と考えられる人ばかりじゃないわよ。
吉永 内館さんと私は、いちいち考え方が真逆で面白いねえ。老いとか死とか決して楽しいことじゃないけど、逃れられない。逃れられないなら受け入れるしかない。受け入れられる自分でいられるか自信がないから、せっせと終活したり筋トレや脳トレしているけどね。不老不死はない。限界は絶対やってくるわけだからさ。
内館 いや、若い人に迷惑かけたくないから、筋トレ、脳トレやるのよ。テレビなどで、「高齢者も人生を楽しみましょう」「挑戦することが大事」みたいに言う人がいるじゃない。でも、言っている人はまだ現役で高齢者の気持ちを想像することさえできない。無責任よ。
吉永 「楽しくないと幸せじゃない」みたいな考えって、高度成長期の価値観だよね。「あきらめないのが若さの秘訣」みたいに言われて、世の中の流れがそっちに向かっているけど、あきらめていいこともいっぱいあると思うよ。
内館 かといって、あきらめすぎちゃって、部屋も散らかり放題、白髪ボサボサ、顔はシミだらけで、「ナチュラルに老いています」っていうのもね(笑)。
吉永 ただの無精(笑)。
内館 私、ロンドンには行けなかったけど、大学院には行ってよかった。いずれホームに入っても、相撲の資料をめくりながら楽しくやれる自信がある。若い頃から続けてきた趣味や好きなことって大事だなって思う。
吉永 私は仕事がなくなったら、「いきいきプラザ」(介護予防推進センター)とかに通いたい。水彩画教室で絵を描いたり、ボランティアしたり。人とつながっていたいんだよね。あとは、積んでいるだけの本がいっぱいあるから読書三昧。
内館 今読んでない本はもう読まないわよ。目も悪くなるし。
吉永 確かにそうだ!
内館 あなたは競馬の予想をしなさいよ。
吉永 いいねぇ。競馬検討は究極の脳トレだ。バス一本で大井競馬場に行けるのよ。100円の馬券買って楽しもうかな。
内館 楽しめると思うわ。それでね、95歳の私と93歳のあなたでまた対談するの。テーマは、「相撲と競馬で老後は救われた」。
吉永 それはいい! 楽しみにしています。
撮影/橋本 哲
取材・文/神 素子
※この記事は「ゆうゆう」2025年5月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。
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