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「終活はしない。同調圧力を感じるわ」(内館さん)【内館牧子さん×吉永みち子さん対談】

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ゆうゆう編集部

30年来の友人である内館牧子さんと吉永みち子さんは、ともに70代。性格も生き方もまったく違う2人は、終活に対する考えも異なります。「終活はしません」と言う内館さん、リビング・ウイルを書き、ホーム見学もしている吉永さん。そんな2人が本音で語り合いました。(後編)

▼前編はこちら▼

>>【内館牧子さん×吉永みち子さん対談】終活する派?しない派?本音トーク

PROFILE
内館牧子さん 脚本家、作家

うちだて・まきこ●1948年秋田県生まれ、東京都育ち。
会社員生活を経て、88年に脚本家デビュー。
NHK朝の連続テレビ小説「ひらり」「私の青空」、同大河ドラマ「毛利元就」などの脚本を手がける。
2000年、女性初の日本相撲協会横綱審議委員に就任。

『迷惑な終活』 1870円/講談社

年金暮らしの原夫妻は70代。妻の礼子はいわゆる終活に熱心だが、夫の英太は「生きているうちに死の準備はしない」という主義。そんな英太がある日、終活を思い立って始めたことは……。礼子をはじめ、登場する女たちそれぞれの「ケリのつけ方」があっぱれ。

PROFILE
吉永みち子さん ノンフィクション作家

よしなが・みちこ●1950年埼玉県生まれ。
競馬専門紙の記者を経て、85年に『気がつけば騎手の女房』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。
以降、数々のノンフィクション作品を発表。
テレビ番組のコメンテーターとしても活躍中。

「ゴミ出しできなくなった」と気づいたらホームに入る(吉永さん)

吉永 実は、老人ホームの体験宿泊をしたことがあるの。

内館 ヒェー!

吉永 沖縄にあるホームなんだけど、すごくよかった。建物はきれいだし、大浴場もジムもシアターもカラオケルームも図書室もある。病院も霊安室もあって、突然亡くなっても家族が来るまで安置してくれる。東京だととんでもない額になりそうだけど、沖縄だからわりとリーズナブルで。でも周囲の人が、「やっぱり遠い」って言うんだよね。迷っているうちに空室がなくなっちゃったんだけどね。

内館 ホームに入るなら、私は絶対に東北がいいな。

吉永 寒いよ!

内館 私のルーツは東北だから、雪が降る場所にいると落ち着くのよ。老いれば大して出歩けないし、東京にこだわらなくていいわよね。

吉永 ネットでつながれるし。

内館 将来、ホームに入るって決めているの?

吉永 不確定要素が多すぎて、決断はできていないんだよね。日常生活に心身が耐えられなくなったらひとり暮らしは難しくない? その目安として、私はゴミ出しが自分でできなくなったときを考えている。介護が必要になったとき、自宅にこだわるかホームに入るか。たぶん、私はホームを選ぶと思う。そのために情報収集しているわけ。介護の先は死だから、病院との連携が確保されているところがいい。

内館 元気なうちにホームに入居した知り合いがいるの。ごめんね。自分のことじゃなくて、知り合いばっかりで(笑)。自由に外出はできるし、3食はついているし、悠々自適に過ごしているのかと思っていたら、「悲しいのよね」って言うの。「私、ここで死ぬのね……」って。

吉永 友達はいないの?

内館 食事が終わるとみんな自分の部屋に入っちゃうんだって。高齢者ばかり集まってお世話されて暮らしているせいか、「何かつまらない」って思うみたい。

吉永 その人は自宅で死にたいのかな?

内館 いや、終の住み処が決まったとたん、自分が世の中の「いらない人」になったことを思い知るんだと思う。

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