ついにスタート!!【続・続・最後から二番目の恋】千明と和平のつながりの確かさを教えてくれたコロナ禍の描写にほっこり!第1話レビュー
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柚野木
ついに始まりました! 鎌倉が舞台、小泉今日子×中井貴一の大ヒットシリーズ「続・続・最後から二番目の恋」の放送が4月14日からスタート。このドラマを心待ちにしていたゆうゆう世代の人、多いことでしょう。11年の時を経て、吉野千明と長倉和平の関係はどう変わった? そして変わらないものとは? 第1話のレビューをお届けします。
※ネタバレにご注意ください
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ドラマ「団地のふたり」が50代に心地良い理由を考えた。私たちの心に沁みた“考える時間”とは?2012年1月から放送のパート1、同年秋のスぺシャルドラマ、そして2014年春のパート2を見て登場人物への思い入れが強くなったぶん、正直なところ新ドラマを見るまで不安があった。でもそれは杞憂だった。やっぱり「いま」を生きる吉野千明と長倉和平、そして長倉家のみんなに会えるのは極上の喜びだ。それをかみしめつつ、第1話の放送を振り返ってみたい。
コロナ禍を経て、長倉家との絆をさらに深めた千明
吉野千明(小泉今日子)は勤務先のテレビ局で長年にわたりドラマ制作に携わってきて、現在はゼネラルプロデューサーというポストについている。59歳のいま、定年を目前にひかえ、自分の一挙一動が「もしや老害にあたる?」と不安がつのってきている様子。運動能力の衰えもじわりと感じている。一方、63歳の長倉和平(中井貴一)は市役所を一度退職したあと、現在は観光課で「指導監」という肩書である。かつての部下である課長の下で地道に働き、増える一方の外国人観光客への対応などに追われる毎日を過ごしている。
そして、長倉家のファミリーは、それぞれに自分らしい暮らしを続けていて、真平(坂口憲二)と妻の知美(佐津川愛美)の間には双子の子どもができた。カフェナガクラを経営する真平の作るスペシャルな朝ごはんを、家族のみんなと揃ってお隣さんの千明も一緒に食べる習慣は今も続いており、話に興じるあまり、遅刻しそうになる展開も健在だ。
このドラマは各シーズンで長倉家のことを教えてくれるシーンがあるのでどこからでも安心して見てほしいのだが、初めて見る人に、ここで、ほんの少しだけおせっかいな説明をさせてほしい。
和平は若くして妻を亡くしており、それ以前に、両親とも早くに死別している。そのため、長男の和平が3人いる下のきょうだいを「親代わり」となって面倒をみてきた。また、きょうだいのうち、末っ子である双子の一人の真平は脳に持病があって、長生きするのは難しいかもしれない。このような背景の事情があって、長倉家の家族は、お互いに「今日を無事に生きている」ことの幸せを意識して生活している。だからコロナ禍に定例会としてオンライン上で家族が顔を合わせるシーンが挟み込まれたとき、これはとても「長倉家らしい」場面だと思った。
そしてここからが、今回の一つのハイライト。このミーティングにはお隣の千明も参加することになっていた。ところが時間になっても参加してこない。そうこうすると、コロナに罹患したか? と思われるぐったりした様子の千明が画面に現れた。
やおら、隣の千明の家に駆け出す万理子。そしてそれを追いかけるようにして後ろに続く和平。こんなことをしたら感染対策のオンラインミーティングの意味がないわけだが、千明が大好きで心配でたまらない二人はじっとしていられない。
お隣の二階に上がると、部屋越しに「なんとしても、人にうつしたくない」千明と、心配でならない「千明のそばに行きたい」二人のやりとりが繰り広げられるのだが、これが「ふすま越し」なのがいい。味わいのある古民家の寝室は、ふすまの向こうにある。この年代ものの建物の効果もあって、会話の一つひとつが、どこかほっこりしたものに聞こえてくる。
そのうち万理子は心配のあまり、家を飛び出して神社でお百度参りに向かうのだが、そのあとも和平はずっと隣の部屋で見守っている。日が落ちて千明がひと眠りした後に目覚め、そこから和平と話をするのだが、その最中に、千明が不意に「怖いよ」と涙声を出した。これまで何があっても一切、泣き言なんて言ってこなかった人なのに。
そうなると、和平としては、心がざわついて、じっとしていられない。もっとそばに行きたくなってしまうわけだが、そこをお互いにぐっとこらえるシーンが、なんともこの二人らしく、ふっと笑いがこみあげてくる。そしてここで強い愛を感じて、この二人のつながりの確かさを教えてもらうのだった。
還暦をむかえてもなお「もがき」は続く
こうやってコロナ禍を経て、より一層絆が深まった二人だから、今までどおり、仲良くケンカもする関係ではあるけれど、どこか、安心感が強まっていることがわかってくる。
ある日、二人は偶然、喪服姿で遭遇し、お互いにさえない表情なので、連れ立って飲みに行くことにする。飲みながら、同期の死、上司の死を語り、遺された人に対する自分の言動があれでよかったのか、後悔の思いがぬぐえないことを語り合う。以前の自分だったら別の態度に出ていたはず……。自分のなかで変化があったことは、いいことなのかもしれないが、これがいわゆる「アップデート」と呼べるようなものなのかどうか……。
アラ還の年頃になってもなお、この二人は「本当に自分たちは大人になれているのか」という不安も抱えたまま。その一方で身近な人の死に接して、自分たちの残されている時間が有限であることを実感するのだった。
第1話の終盤では、次回からの展開を予想させる、新しい登場人物とのやりとりも繰り広げられた。千明は近所のかかりつけ医となりそうな成瀬千次(三浦友和)と、ちょっとドキドキするような出会いをし、一方の和平は、一条さんの娘である早田律子(石田ひかり)に初対面で、いきなり非難めいた視線を送られる。その秘密はキャバクラが大好きだった一条さんの遺品にあるのだが……。
これまでのシリーズで丁々発止の掛け合いだった二人のやりとりが、すこし丸みをおびたものになるなかで、新たな登場人物をまじえて、どのような新しい展開を迎えるのか。小泉今日子と中井貴一という俳優の見事なまでの掛け合いに感じ入りながら、ここからのストーリーのワクワク、ドキドキを思い切り楽しんでいきたい。
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