【倉田真由美さん】がんで余命半年と宣告され、抗がん剤治療を受けなかった夫。妻がつづった闘病の様子とは?最新作情報
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ゆうゆう編集部
すい臓がんで余命半年と宣告され、抗がん剤治療を選ばず、最期まで自分らしく生きた夫。夫の闘病生活を支えた倉田真由美さんに、『抗がん剤を使わなかった夫~すい臓がんと歩んだ最期の日記~』について伺いました。
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『抗がん剤を使わなかった夫 ~すい臓がんと歩んだ最期の日記~』
倉田真由美(著)
古書みつけ刊
2024年2月、56歳で旅立った叶井俊太郎さん。「間違いなく最高の父ちゃんだった」と倉田さんが言う、中学生の娘とのやりとり、家族での旅行。切なさはありつつも心あたたまるエピソードが記され、叶井さんの人柄が伝わってくる。
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「思い残すことは何もない」明るく飄々と生ききった夫
2022年6月、倉田真由美さんの夫、叶井俊太郎さんは、すい臓がんと診断され、余命を宣告された。それは「何もしなければ、悪れば半年、どんなに長くても1年」という非常に厳しいものだった。『抗がん剤を使わなかった夫』は、がんの宣告から、叶井さんが旅立つまでの1年9カ月の闘病の記録だ。「夫が主役の本ですから、シンプルに起きたことだけを書きたかった」と言う倉田さん。
感情を抑えながらも夫への思いのこもる筆致でつづられた、夫婦の会話、日々の暮らし、病状の変化……。そこからは倉田さんの深い愛、夫を失う日が間違いなく来ることへの恐れ、どうしようもない悲しみが伝わってきて切ない。
本書で倉田さんが最も伝えたかったのは、「がん治療は自分の好きなように選択できるし、していいんだよ、ということ」と話す。タイトルどおり、叶井さんは抗がん剤を使わずに日々を過ごし、宣告された余命よりも長い月日を生ききった。
「がんと診断されると、医師からは、まず抗がん剤を使い、抗がん剤が効くと手術をするという標準治療を勧められます。夫もそうでした」
多くの患者も家族も、がんと言われて気が動転し、抗がん剤を使うとどうなるのか、手術をするとどうなるのかまでは思いが及ばない。
「その結果、医師が言うままの治療を受け、すべて医師に任せてしまう人がほとんどだと思います。私もそのときは、がんは絶対に切ったほうがいいし、抗がん剤も当たり前に使うものだ、と思っていました」
診断後、夫婦はいくつもの「セカンドオピニオン」を受ける。なかには「抗がん剤治療や手術をするとガクンと体力が落ちて、しかも寿命は変わらない」というものもあった。そして叶井さんは、「抗がん剤治療も手術も受けない」選択をする。
「夫は『抗がん剤とか手術で痛い思いをしたり、苦しんだりしたくない。俺はやりたいことは全部やってきたから人生に何の後悔もないし、いつ死んでもいい』と言いました」
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疲れやすい、手指がこわばる、汗をかきやすい……。これまで経験したことのない体調不良に戸惑う時期ですが、この時期の不調は「これって更年期?それとも単なる老化?」と判断がつきにくいものも多く、どう対処すればいいのか不安を抱える人も多数。
詳細はコチラがんとの闘い方の「一例」として知ってほしい
本人の強い意志に「夫の人生は夫のもの、すべて夫が決めるべきこと。私にできるのは、夫の選択を受け入れて見守り、支えることだけ」と倉田さんも覚悟する。とはいえ、抗がん剤治療を受けないとどうなってしまうのか、不安は残った。
「それを知りたくて闘病記を探しましたが、そのほとんどが標準治療を受けた人のもの。標準治療を受けなかった人の情報はありませんでした。 抗がん剤を使わない選択をした夫は、普段どおりの生活を続け、やりたいことをやり、食べたいものを食べ、最期、穏やかに自宅で息を引き取りました。夫のように抗がん剤治療を受けない選択もあり、治療しないから亡くなるわけではないんです。がんとの闘い方の一例として知ってほしくて、この本を書きました」
倉田さんは標準治療そのものを否定しているのではない。
「ともすると標準治療を受けた人は、よく頑張ったと言われ、受けなかった人は、もったいないことをした、命を無駄にしたとまで言われます。でも命は自分のもの、痛みを受け入れる責任も自分にあります。他人が判断することではない。選択権はそれぞれの人にあるんです。夫は標準治療を受けませんでしたが医療を拒否したわけではなく、胆管を通すための手術や胃と腸をつなぐバイパス手術などは受けました。一つ一つ自分で選択し、最期まで自分の選択を後悔しませんでした。私もがんになったら、治療法は、全部自分で決めようと思います」
命は自分のもの。どう生きるか、どう死ぬか、自分で選んでいい
日本人の死因の第1位はがん。2人に1人ががんになり、3~4人に1人ががんで亡くなる。知ってはいても、なかなか自分のこととしは考えられず、自分や家族ががんになって初めて迷い、悩む人は多い。
「50歳以上になったら、元気なうちに自分はどうしたいのか、どう生きてどう死にたいか、考えて決めておいたほうがいいと思います」
不安を抱えながらの1年9カ月、倉田さんは何を心の支えとしていたのだろうか。尋ねると、「夫そのものの存在です」という答えが返ってきた。
がんとわかっても、がんが進行しても、陽気で周りを楽しませたり驚かせたりするユーモアを失わなかった叶井さん。何度も「倒れて死んだふり」をして倉田さんを驚かせ、倉田さんは、そのたびに「何でそんなことをするの?」と半泣き半笑いで夫を叱るふりをしたという。
「私にはとても面白く、夫の好きなところでした。この本で夫の面白さも知ってもらえたらと思います」
PROFILE
倉田真由美さん
くらた・まゆみ●1971年福岡県生まれ。漫画家、エッセイスト。
一橋大学商学部卒業。「ヤングマガジン ギャグ大賞」で漫画家デビュー。『だめんず・うぉ~か~』が大ヒット。
2009年に映画プロデューサーの叶井俊太郎さんと結婚。
※この記事は「ゆうゆう」2025年7月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。
取材・文/田㟢佳子
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