【要約小説】名作のあらすじを読もう!
有島武郎の『生まれいずる悩み』あらすじ紹介。才能と現実のせめぎ合い——若者の壮絶な葛藤とは?
公開日
更新日
ゆうゆうtime編集部
『生まれいずる悩み』は、有島武郎が贈る、芸術家の葛藤とその過程を描いた文学作品です。美しい北国の自然を背景に、主人公の心の痛みと未来への希望が絡み合う珠玉の一作。そのドラマは現代を生きる読者の心にも響きます。
「私」との出会い - 才能と初めての衝撃
語り手である「私」と出会った少年・木本。それは札幌の静かな町でのことでした。彼は幼く、寡黙で、どこか反抗的な性格。ある日、木本は絵を抱えて「私」を訪ねてきます。乱雑ながらも独自の色彩と技巧に満ちた彼の作品に驚きを覚えた「私」の反応は、少年に確かな自信も、同時に悩みの種も与えることになります。この初めての出会いが、一人の青年の運命を大きく揺さぶります。
木本少年の人生と葛藤
木本は絵画に情熱を感じながらも、現実の厳しさに立ち向かう姿が描かれます。家庭の状況により学問の道を閉ざされた彼は、北海道の厳しい自然の中で漁師として働く日々の中、限られた時間と環境で絵を描くことに全力を注ぎます。労働の合間に感じた自然の美しさとその描写への渇望は、彼の唯一の心の救いであり、人知れぬ苦悩のもとでした。
「私」との再会 - 自然と芸術、そして絆
数年後、「私」と木本は再会します。大人になった木本は以前とすっかり変わり、たくましい漁師として生きていますが、彼の中には芸術への情熱が依然、火として燃え続けています。この再会で交わされる彼の苦悩と決意に満ちた言葉の数々。「私」にはその苦しみが強く響き、木本の芸術家としての生き方について深い共感と希望を寄せるようになります。
木本の覚悟と孤独 - 生き方を巡る苦悩
木本は、漁師として生きながらも、自らの中にある絵画への欲求と才能とをどう扱うべきか、絶えず悩み続けます。その苦悩は、ついに命を絶つことすら考えるほどに深いものでした。「私」に送られたスケッチ帳や手紙からも感じられるその誠実さに、「私」は彼の選択に自らの手を差し伸べることもできず、ただひたすら見守るしかありませんでした。この関係を通じて、読者にも「生きる目的」や「仕事と情熱」の葛藤がじんわりと伝わります。
自然に魅せられた芸術家の瞳
作品では、北国の美しい自然が木本の心象とともに鮮やかに描かれています。峠の風景や、雪化粧をした山々、荒々しい海の表情。それらは、木本の矛盾と悩みを反映する象徴的な舞台となり、彼の魂を癒やし、また試練を与えます。人間の才能と現実のせめぎ合いが、まるでこの大地と空の戦いのように描かれていきます。
まとめ
『生まれいずる悩み』は、芸術に命を懸けたいと願いながらも現実の壁に押しつぶされそうになる若者の壮絶な葛藤を鮮明に描き出した作品です。有島武郎の筆が紡ぐ北国の自然美と生きることへの問いかけは、読む者の心に深く刺さります。特に50~60代の読者にとって、人生の振り返りや内なる情熱の再確認としても大切な読書体験となるでしょう。木本の情熱と迷いが交錯する姿は、私たちにとって感動と共感を伴う貴重な物語です。「美しいものとは何か」「人が生きる意味とは」。本作から、今の自分自身への問いを見つけてみませんか?
▼あわせて読みたい▼

小さき者へ・生れ出づる悩み
有島武郎(著)
新潮文庫(刊)
※詳細は以下のボタンへ