「もう行けない」と気付いた日。認知症の母が泣いた温泉旅行計画【認知症母との介護生活#13】
60代主婦の日常を、4コママンガとエッセイにしてブログで配信をしている、ぱいなっぷりんさん。その中から、「認知症母との介護生活」を順に紹介していきます。
▼「認知症母との介護生活」マンガ 1話から読む▼
>>想像の遥か上を行く発想をする母に、考えたことは?【認知症母との介護生活#1】温泉に行きたいんだけど…
一時期
母と このマンガのようなやり取りを
繰り返した時期が あった
初めて 言われた時
てきとうに 返事を濁していれば
そのうち 忘れるだろう
と 思っていたんだけど
何故か 忘れず
何回も 何回も 言って来た
母は
認知症になる 前
いろいろな友人を 誘っては
温泉に行くのが 趣味だった
いつも 母が
場所を決めて 予約をして
80歳になって 免許を返上するまでは
自分の車に 友人を乗せて
その後は
駅で 友人と待ち合わせをして
電車で行ってたくらい
だから 今回も
余程 みんなを誘って
温泉に行きたかったんだね
以前
デイホームのスタッフに
聞いたことがある
認知症のひと同士は
同じことを
繰り返し 何度も何度も
話しているけど
お互い 記憶に残らないので
本人たちにとっては
楽しく コミュニケーションが
取れているんです
その理屈からすると
デイホームの友人たちが
介護認定を受けている
という事実は
母にとって
基本 認知の枠外で
その友人たちは
フツーに元気な
気の合うひとたち
なのだろう きっと
母から 温泉旅行の話を
何度目かに された時
私は 言った
みんな 元気そうでも
高齢でしょ
温泉に
私一人で 4人も連れて行って
何かあったら 責任問題だよ
私なりに 精一杯
オブラートに包んで
言ったつもりだったけど
その言葉に
母は
明らかに ムッとしていた
温泉代も 一泊分は出す
という
(母にしてみれば)好条件も付けて
まさか 断られるなんて
ゆめゆめ 思ってなかったんだろう
じゃあ いいわよ
みんなで 電車で行くから
行き方を 調べてちょうだい
と 強気で 言い返してきた
認知症のひとは
自分の立ち位置や
自分を取り巻く状況を
うまく 理解できない
行き方を書いた紙を 渡すと
それを見て ようやく
電車を 何度か乗り継いで
目的地まで辿り着くことは
自分には 無理だ
ということを
理解したんだろう
やっぱり 温泉行くの やめる
そう言ってから
もう 私は
お友だちと 温泉に行くことは
できないのね
と 独り言ちて
テーブルに伏して
わんわんと 泣き出してしまった
母を
泣かせてしまった
おかあさん
かわいそうだけど
でも
仕方ないよ
希望と 可能性を信じて
ガンガンに突き進んでいた
若い頃とは 違うんだよ
人生の後半になったら
如何に 自分に折り合いをつけて
ひとつひとつ
諦めたり 手放したり していくか
そこが
大切になってくるんだよ
私だって
いろいろ 思うことはある
けど
日々 折り合いをつけて
こうして
おかあさんと 暮らしているんだよ
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