くも膜下出血から奇跡的に復活した平浩二さん、名コンビ・石田社長&保科有里さん…感動と笑いが詰まった【夢グループ20周年記念コンサート】第2部レポート
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恩田貴子
【橋幸夫&ZERO】時空を超えた“絆”のデュエット
yH2に続き、ステージに登場するのは、本来であれば橋幸夫さんのはずだった。しかし、この日は数日前からの不調のため、大事をとって欠席することになったという。
「橋さんに今朝電話をしたら、元気な大きい声で、『お客さまにごめんなさいと伝えて欲しい』と。『夢コンサート』にもすぐ復帰したいそうです」という石田社長の報告に、客席からは安堵の声が上がっていた(現在はすでに復帰)。
ここでZEROさんが、橋さんから贈られたという鮮やかなブルーのジャケットを羽織って再び登場する。
橋さんとのデュエット曲「絆」をリリースしたばかりのZEROさん。橋さんが「夢グループ」に合流した当初から信頼関係を築き、家族のようなつき合いを続けているZEROさんも、橋さんの体調が心配で仕方がなかったよう。
「僕も今朝電話をしたんですが、橋さんの声が明るくて。『橋さん、会いたいです』って言ったら、『おぉ! 今元気バリバリだから会いに行くぞ!』と答えてくださって、本当にうれしかったです」(ZERO)
二人が歌うはずだった「絆」のイントロが流れると、舞台上のスクリーンには「絆」のレコーディング風景の映像が映し出された。スクリーンの中で、橋さんが歌っている。その映像に合わせて、ZEROさんが舞台上で声を合わせる。まるで時空を超えて、二人の歌声が重なり合っているかのようだ。
橋さんの生の歌声が聴けないことを惜しむ声は、もちろんあっただろう。だが、映像と音声に寄り添うかたちで歌い上げたZEROさんの歌声は、橋さんへのリスペクトと深い絆をしっかりと伝えるものだった。
感動に包まれたこのひとときは、「夢コンサート」ならではの特別なステージとして、多くの人の心に刻まれたのではないだろうか。
【石田社長】母への想いを込めた、魂の歌
コンサートのクライマックス。ステージに登場した石田社長が、静かに語り始めた。
「よく聞かれるんです。『社長にとって一番感謝している人は誰ですか?』と。僕にとっては、親父とおふくろです。親父はもう亡くなりました。おふくろは今93歳。福島の郡山で一人暮らしをしています。今日この会場にいらしたみなさんも、それぞれに思い浮かぶ方がいらっしゃると思います。でも一番感謝している人といえば、やはり“お母さん”じゃないでしょうか。最後に歌を歌います。吉幾三さんの『かあさんへ』」(石田)
石田社長の歌は、決して技巧的に優れているとは言えないかもしれない。しかし、その朴訥とした歌声には、まっすぐな感情が込められている。「ありがとう」と「ごめんなさい」——誰もが心の奥に抱える親への想いを代弁するかのような歌に、静かに涙をぬぐう観客の姿も多く見られた。
終演後のロビーには、再び活気が戻っていた。「狩人、素敵だったわね」「平浩二さん、元気そうでよかった」と、あちこちで感想を語り合う人々。
物販ブースでは、石田社長がファンと楽しげに言葉を交わしていた。その光景は、もはやコンサートというより、まるで大きな家族の集いのようだった。
それぞれが主役を張れるスターたちが、次々に登場する「夢コンサート」は、単なる歌謡ショーではない。懐かしい歌に身をゆだねる時間──それは、音楽とともに、あの頃の空気や景色、大切な誰かの面影までもが鮮やかによみがえる、特別なひととき。
耳にした瞬間、記憶の扉がそっと開き、あの頃の自分が心に舞い戻る。そんな「名曲が運ぶ時間旅行」を、「夢コンサート」は叶えてくれる。この日、会場を後にした誰もが、心に温かな灯をともして、少しだけ若返ったような気持ちで家路についたことだろう。
まだ「夢コンサート」を体験したことのないあなたも、ぜひ一度、会場へ足を運んでみてほしい。きっとそこには、あなたの青春が、そして忘れていた大切な思い出が、きらきらと輝いて待っているはずだから。
撮影/園田昭彦
